※この作品は、大抵の事なら寛大な心で許して下さる方のみ、お読み下さいませ。 ――と、言いましょうか、あらかじめに申し上げるべきでしょうね。 「申し訳ありません」 ――このように、冒頭からお詫びするより他ない作品です。 それだけは申し上げておきましょう(^^;;; |
常夏の地、第三新東京市。 なーんか、前回も同じ始まりだったんじゃないのか? ――というツッコミも甘んじて受けよう。 切迫しているのだ。 前回の更新から早いもので既に5ヵ月が経過し、既に春を迎えたこの時期でありながら未だに冬眠を続けている当サイトにとっては、死活問題なのである。 もはや事実上、メインコンテンツは掲示板と化してしまったワケであるが、腐っても一応は二次創作のFFを後悔――もとい、公開している当サイトとしては、このまま更新なしに3周年を迎える訳にはいかない。 しかし、ネタは無い。そう――既に活動限界に達しているのだ。 シモネタは大好きっ!――もとい、下ネタ系統なら無きにしも非ず、であるが当サイト内での公開に限定した場合、それもまた無理が生じてしまう。 前作同様、プロットなんぞ決まっている筈もない。 この状況下で適当に舞台の幕は上がっていくのである。 |
『嶺の上で――二番煎じ』 by イイペーコー |
「みんな揃ったようね」 そう告げたのは前回同様の議長役、葛城ミサトであった。 今回もとある会議室に集結した面々を前にして、前回同様の開口一番の台詞が告げられた。 「みんな揃った――じゃないわよ、まったく。 GWを前にして色々と忙しいって言うのに、なんで突然呼び出しを受けなきゃなんないのよ、もう」 不満たらたらの様子で真っ先に抗議の弁を唱えたのは――ある時は三姉妹の長女役、またある時は某大企業の娘でありながらメイドになってしまった少女の役で、そして勿論、本来の役所は選ばれしセカンドチルドレン――エヴァ弐号機のパイロット、惣流・アスカ・ラングレーである。 前作からのコピペのオンパレードであるが、大きな差異がここにあった。 メイドになった少女の役は無期限休止の状況下にある。 作中ではあるが、ここで深くお詫びしておこう。申し訳ありません。ホントにすみません――はい。 「あの――ひょっとして、またFFのネタが尽きて呼び出されてしまったんですか?」 全ては冒頭の通り――なのであるが、話を進めるために説明的なセリフを口にしたのは、当サイトにおいてはそれなりに正ヒロインの役を務めた事のある我らが愛すべきおさげの委員長、洞木ヒカリである。 初期のプロットから大幅に逸脱し、某三姉妹物語では外伝においてシンジの妻の座までゲットした経験もあった。 「それにしても女ばかり集めてどうする気なんだか。 ああそうそう、季節外れだが、女ばかりの水泳大会でもやってみるとか――な。ポロリもあるよ、ってヤツ。 まあなんだ、意外と碇の旦那もそういう助平な番組が大好きかもしれないし」 「コダマさんっ! シンジさんに限ってそんなコトはありませんっ! ヘンなコトを言わないで下さいっ!」 彼女独特の男勝りの口調を覗かせてからかうように発言した洞木家の長女に対して、間髪置かずに異を唱えたのは惣流家の次女――ユイカである。 日頃大人しい彼女であるが、シンジ絡みとなると我を忘れてしまう傾向にあるのは、もはや惣流家の血筋の証と言えようか。 「それにしても前回は呼ばれなかったコダマお姉ちゃんやノゾミ――それにライムさんまで今回は集められたんだね。 その一方で黒ジャージのお兄ちゃんとか、メガネの――ほら、名前なんだっけ? ユイカ姉さんのクラスメートの――相沢? その他、男のヒトたちは全然呼ばれてないんだね」 一応、訂正しておこう。“相沢”ではなく、某作品では主役を務めた事もある相田ケンスケ少年である。 鈴原少年共々――ついでに言えば、日向・青葉という男性オペレーター陣も欠席している。 結果――会議室の縦に長いテーブルの片方にずらりと勢揃いしているのは、議長席に座る葛城ミサトを除けば、着席順でマヤ、アスカ、ユイカ、マイカ、コダマ、ヒカリ、ノゾミ、レイ、ライムである。 どうやら前回同様、キョウコは後からの登場機会を窺っているのだろう。 「それで――そろそろ私達まで呼ばれた理由をご説明頂けませんか? 冬木市からわざわざ呼びつけられたのです。 まさか本当にFFのネタを出し合う為――ではないとは思いますが、念の為に申し添えておきますわ」 ――と、ネコかぶりモードで口を開いたのは遠坂凛である。 彼女の内なる気性を如実に表していると言えよう真紅のその衣装が目に眩しい。 思えば、テーブルを境にして正面に座っているアスカのパーソナルカラーも赤である。 世に言う“ツンデレ娘”の傾向として、赤色を好むというジンクスがあるのかもしれない。 「そんな事よりもシロウはどこに行っているのですかっ。 ダイサントーキョー市ならではの食材で腕を揮ってくれるという約束なのです。 腹が減ってはイクサは出来ぬ――というこの国の兵法にもある通り、まずは昼食を摂って英気を養い、その上で軍議に臨むべきかとっ」 この場にいない彼女のマスターの姿を探しながら、そう力強く主張したのは名高きブリテンの騎士王アーサーことアルトリア・ペンドラゴン――その人なのであるが、かつての威風堂々とした姿は少々影を潜め、すっかりと衛宮士郎に餌付けされてしまった事を証明するかのように、きゅるるる〜と彼女の可愛いお腹の虫が鳴き始めている。 「あの……セイバーさん。先輩なら、碇シンジさんと一緒に調理場で皆さんの昼食を準備しておられる筈です。 この人数の食事の準備は大変ですし、やっぱり私もお手伝いした方がいいと思うんですけど」 そう言って、桜がその場から立ち上がろうとすると、「「それなら私達も手伝いますっ」」とエヴァ陣営の料理上手コンビであるユイカとヒカリが親友ならではの阿吽の呼吸で口を開いた。 「お待ちなさい。 確かに殿方に食事の準備を全て任せてしまうのは淑女として心苦しい限りですけれど、今はこうして各作品の主要な面々が揃っているのです。 貴重なその時間は有意義に利用しなくてはなりませんわ。 ミセス・カツラギ――失礼、ミス・カツラギでしたわね。 今日の本題は、“嶺上開花”の三周年に向けて、その記念作をどうするのか?――それを論議する事が目的なのでしょう? ええ、ミス・トオサカとは違って洞察力に長けている私ですから、説明が無くとも、そのぐらいは理解しておりますわ」 高貴な雰囲気を醸し出す金色の縦ロールの髪を揺らせつつ、どこか勝ち誇ったように発言して桜やユイカ達を制し、返す刀で主導権を掌握しようと言葉を繋いだルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。 しかし、彼女は決して踏んではならない地雷を踏みつけてしまったと言えよう。 「ちょっとソコのお蝶婦人モドキっ! いい? 私は結婚できなくて独身を続けているワケじゃないんだからねっ! ちなみに最近の晩婚化の傾向を考えれば、29才で独身だと言っても決して珍しくはないわっ! むしろ標準的と言っても無問題よっ!」 どむっ!――と、テーブルを叩き割らんばかりに拳を落とし、背後に燃え盛る炎のオーラを浮かばせた葛城ミサトの迫力の前に、さすがのルヴィアゼリッタも思わず絶句してたじろいでしまう。 別に独身である事を非難した発言ではなかった筈なのであるが――とにかく、この手の話題を口にする事はタブーなのであろう。 そのやりとりに目を丸くして驚いた様子を覗かせつつ「なんだかタイガと似てるわね――あの人」と口を開いたのは、銀髪の美少女イリヤスフィール・フォン・アインツベルンである。 この場に居合わせている面々の中では、一番幼く見える彼女であるが、実年齢はこの春に高校二年生となったアスカ達よりも年上であるという。 さすがはX指定のゲームを原作に持つキャラである言えようが、それならば何故、イリヤルートが作られなかったのか――実に淋しい限りである。 閑話休題。 こうして、未だに発言の機会を待っている者は居るものの、とりあえずは全員の紹介を終えて、ようやく本題へと足を踏み入れていくのである。 いやはや、前作同様に無意味にファイルサイズが膨らむ一方と言えよう。 さて――こんな時こそ説明役の彼女に発言の機会を与えるべきであろう。 その意を酌んでいるのか、おもむろに手にした分厚いファイルを開きながら口を開いたのは伊吹マヤであった。 「状況を簡潔にご報告致します。 先程のミス・エーデルフェルトの見解の通り、“嶺上開花”は5月29日にサイト開設三周年を迎えます。 一方、同サイトの前回の更新は昨年の11月22日であり、既に5ヵ月が経過している状況下にあります。 このままでは更新を期待している読者の関心は低下する一方でありますし、そこで3周年を迎えるその日には、必ず記念作を更新したいというサイト管理者の意向との事です」 「今更、誰も更新なんて期待してないんじゃないの?」――と呟くコダマ嬢。 思わず、うんうんと頷いて同意を示したのは、マイカとノゾミの末っ子コンビである。 ご尤もなのであるが、世の中にはごく一握り程度の少数でも奇特な読者の方が存在している可能性もあるだろう。 「説明を続けます。 最近の同サイトの傾向ですが、2005年8月頃から主たるジャンルを“Fate/stay night”へ移行し、以降は「騎士王の新たな戦い」シリーズの更新が12回行われています。 同作品は所謂“士剣”物であり、主人公の衛宮士郎と原作においては正ヒロインのひとりであるセイバーとの恋物語の筈なのですが、書き手の嗜好を反映してか、どこかハーレム的な雰囲気を感じる事ができると言えます」 「異議ありっ! はーれむ、などという如何わしい展開など微塵もありませんっ! シロウは“俺はおまえ以外の女性と結婚する気なんかこれっぽっちも無いんだからな”――と、シリーズ11作目の作品内で、それはもう凛々しく、そして力強く宣言してくれているのですからっ!」 「まあ、とかく恋心というのは移り易いものよ。 今は衛宮くんがセイバーしか見ていないという点は否定できないけど、この先はどうなるか判らないわよ」 「姉さんの言う通りです。 それにいかに堅物で鈍感な先輩でも既成事実を作ってしまえば、こっちのものですし」 ニヤリ――と、なにやら美少女らしからぬ不気味な笑みを浮かべつつ、黒い影をにょろにょろと蠢かす桜であった。 「ねえ、ユイカ――あの桜さんという方、家庭的な雰囲気とかあってどこかユイカと似ていると思っていたんだけど、ちょっと怖そうな一面もあったのね」 「ええっ。ユイカと桜さんが?」 ヒカリにそう言われて、思わずまじまじと自分自身と桜とを見比べるユイカ。 でも、ユイカは黒いオーラは出ていないと思うんだけど――と内心思い浮かべて苦笑いを覗かせる彼女であった。 「ソレだっ!」 思わず声を上げたのは議長役のミサトである。 びしっ――と指先をユイカに向けて、力強く主張を始めた。 「ツンデレ系とかメガネっ娘とか、素直クールとか、天然系とか――世に萌え系のヒロインの形はさまざまあるけれど、これからは桜ちゃんのように腹黒系のヒロインの時代よっ!」 いや、ちょっとヒトを勝手に腹黒系のヒロインだと断定して欲しくないんですけど――という桜の非難の声が耳に入っていないのか、更に独自見解による主張を続けていくミサトであった。 「三周年の記念作は久しぶりの三姉妹の外伝でいきましょう! ――で、黒桜ならぬ、黒ユイカ路線よっ! シンちゃんを独り占めしたいユイカちゃんが、手料理に痺れ薬やらビヤクやら混ぜたりして、あの手この手で策略を巡らせて――」 ごいんっ!――と鈍い音が会議室に響き渡る。 それはまさに電光石火の早ワザであった。 どこから取り出したのか愛用のフライパンを一閃させると、妄想街道を暴走していたミサトの後頭部を痛打し、沈黙させてしまったのである。 さて、それはいったい誰の仕業であったのか――キャラのイメージを損なわない為に、一応はヒミツにしておこう。 「うわ、あのコってば、おとなしそうに見えて、容赦なくフライパンで殴ったわよ。 なるほど、あれならウチの桜といい勝負かもしれないわね」 「姉さん、いくらなんでも私はフライパンを振り回したりはしませんよっ」 兎にも角にも、こうして議事進行役が沈黙してしまい、このままでは会議自体の継続が困難であろうかと思われた。 「あーん、もうどうしたらいいのよ〜」と内心考えているのか、苦笑いを浮かべつつも、揃った面々の中では、一番の年長者であるマヤが渋々ではあるが口を開いた。 「説明を続けますね。ええ、続けさせて頂きますとも。 こほん――前述の「騎士王の新たな戦い」シリーズを除き、昨年の6月6日にシンジ君の誕生日記念作を更新したケースを例外とすれば、比較的最近に更新された短編も全て“Fate/stay night”を基にした二次創作作品です。 シリーズ物が“士剣”であるのに対して、短編の方は“士桜”、“士凛”そして“士郎×イリヤ”というカップリングで発表しています」 「なんだよ、最近はすっかりソッチ側の作品ばっかりじゃねーか。 それなら私らは呼ばれる必要が無かったんじゃないの?」 「ちょっとコダマ姉さん、そんなコトを言っちゃダメだよっ。 今日の会議の結果次第なら、また洞木三姉妹物語の続きがあるのかもしれないよっ」 健気に姉を諭すノゾミであるが、その可能性は極めて低い。 一部の読者の皆さんから、外伝15「初夜」の「コダマの章」、「ヒカリの章」、そして「ノゾミの章」のリクエストがあった事を思い出したが、如何せん現在のisweb運用規則に沿っていけば、年齢指定を要する作品を当サイト内で発表する事はできないのである。 「ソレはさておき、既に“士剣”、“士桜”、“士凛”そして“士郎×イリヤ”というカップリングの作品を発表しているのです。 ならば公式における人気ランキングの結果を踏まえれば、僭越ですが次回は士郎と私のラブストーリーが相応しいかと」 「らっ、ライダーっ!? 貴女、どこから湧いてきたのよっ?! 今回の召集メンバーってアレでしょ? 一応は「騎士王の新たな戦い」シリーズに登場しているコトが条件の筈だと思うんだけど」 「問題ありません、サクラ。 私とて短編の“騎乗兵の策略”で登場機会があったのですから。 いえ、そもそもその短編のタイトルからして、同作品の正ヒロインは私でなければならないと思う次第なのですが」 「お待ちなさい。 そもそも読者のニーズを考えるならば、高貴な女性が恥らいつつも、その少女を一途に慕っている少年の想いに応え、身分の違いを乗り越えて真実の愛に目覚めていく様子を描くべきではなくって?」 「愚問ですね、お蝶婦人。 萌え系として受けの良いヒロインを選ぶなら、ロング(の髪)&巨乳属性は言うに及ばず、メガネっ娘属性というマニアックな部分も確実に抑え、そして何と言っても長身で綺麗なお姉様属性を有しながら、同時に妹属性まで密かに隠し持っている私こそが適任である事は衆目の一致する所でありましょう」 「誰が“お蝶婦人”ですかっ! そもそも、最近の若年層の読者事情を考えれば、“○ップを狙え”は知っていても、“○ースを狙え”は知らないケースが多いものですわ」 突如、乱入してちゃっかり主導権を握ろうとしているライダーの言動によって、更に会議は混迷を深めようとしている。 それはさておき、フィンランド生まれの貴族の御息女が、ナニゆえに倭の国のアニメ事情に精通しているのかは謎である。 女三人寄ればかしましい――という諺があるが、この場に至っては、エヴァ(三姉妹)陣営が10人、Fate陣営が6人、計16人もの女性キャラが勢揃いしている有様である。 これでは収拾がつく筈も有るまい。 もう限界です、センパイ――と、こんな状況を想定したのか、キョウコ同様に欠席してしまっている赤木リツコの面影を脳裏に浮かべるマヤであった。 そんな彼女を他所に次回作に関する自己主張合戦は続いていく。 「てっとり早く更新させようと思うなら、昨年の二周年記念作として準備していて、結局はお蔵入りになってしまった“士凛”物の短編を再利用すべきだと思うわ。 既に7割ぐらい出来ている筈だし――って、別に私は衛宮くんのコトなんか、コレっぽっちも意識してないのよっ。 そう、ただ純粋に更新させるコトだけに目的をおいて――」 「ちょっと、ソコの赤いのっ! 記念作なら、やっぱり長年手掛けてきたLAS系の作品で臨むべきよっ! 幸いに半分できたままお蔵入り状態で寝かせてある『マーキング』の続編があるコトだし、再利用するならコッチの方が先よっ! ええ、勿論、アタシはシンジのコトなんて、ほんとは眼中にないんだけど、主演女優としてベストの演技をして見せるわ!」 「あのっ! お蔵入り作品の再利用なら、『夢オチLHS』シリーズの“その9”を完成させるという手もあると思うんですけどっ!」 「ヒカリ姉さん、今の私たちの設定はソッチのお話の設定とは違うと思うんだけど」 「ナニゲに産まれた娘の名前はどっちの作品も同じだけどね」 凛とアスカによるツンデレ娘対決、更には漁夫の利を狙うヒカリの主張。 そして少ない出番の中、少しでも話題に参加しようと口を挟むノゾミとマイカ。 その2人もチャンスがあれば、自らをメインとする作品を提案しようと虎視眈々と狙っている事だろう。 互いにヒロインの座を我が物にしようと自己主張を繰り返す中、とても議論が纏まるとは思えない状況に思われた。 その時である。 ずっとここまで沈黙を守っていた綾波レイが口を開いた。 「私に提案があるの」 「ね、姉さん?」 てっきり今回の作品の登場機会としては、最後のオチとして『結局、次回作のネタは決まってないよ』『問題ないわ。いつものコトだもの』という会話で締め括るまで自分達姉妹の出番はないものと考えていたライムである。 突然、手をあげて、いつもの彼女のように無表情のままではあったものの、なにやら主張を始めようとしている姉の姿に動揺を隠せないライムであった。 (ひょっとして、姉さん――外伝14の『唯、思う事は……』の続編を狙っているのかしら? でも、それだと他のみんなが個々に主張している事と同じだし、こんな状況の中では説得する事は出来ないと思うんだけど) 妹ライムの心配を他所に、その場ですっくと立ち上がったレイは、周囲の面々の視線が自身に注がれている事を確認すると、そのままおもむろに話し始めたのであった。 「惣流三姉妹物語にあって、騎士王の新たな戦いシリーズにないもの。 それがひとつのポイントになるわ」 どよどよどよ――と、騒めきが走る。 少女達は互いに目と目を合わせて首を傾げていく。 はたして、彼女は何を語ろうとしているのか。 プロットなきこの作品だが、一応は山場を迎えたのか?――と思われたその桜咲――もとい、刹那。 くぅぅ〜〜〜と、綾波レイのオナカが空腹を訴えたのであるっ。 その途端、お約束――とばかりに椅子を引っくり返しながら盛大にその場で転倒してしまう女性陣であった。 「いかりくん、おなか……すいた」 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「驚いたよ、シンジ君。 随分と料理上手なんだな。手際も実にいいし、なにより料理に対する真摯な姿勢がいいよ。 これからも精進すれば、もっと上達するのは間違いないと思うぞ」 「ありがとうございます、士郎さん。 僕も士郎さんのように本格的な調理が出来るようになりたいです」 「いや、俺のは殆ど自己流だし、あまり誉められたものじゃないんだけどな」 すっかり息の合った衛宮チーフと碇シェフと化した調理場の2人であった。 おいおい、これなら次回作は“士郎とシンジの3分クッキング”でもいいんじゃないの?――と思われたその時であった。 「そこまでよっ!」 「むっ?」 「誰?」 なにやら、この辺のセリフも前作からのコピペっぽいな――と気付いた貴方。ビンゴである。 地球に優しく、何事もリサイクルの気持ちを忘れてはいけない。 そして、この会話がリサイクルだと気付いた貴方なら、ここで登場する人物も特定できる事だろう。 そう――彼等の目に映ったのは、紺色を基調としたメイド服を身に纏った美しい女性であった。 紅茶色の長い髪は白い髪留めで留め、3*才という年齢を全く感じさせない程にメイド服独特の清純な雰囲気を見事に醸し出し、更には細くくびれた腰と豊かな胸、そして丸みを帯びたヒップが実にありありと目に焼き付く程に、ぴったりとフィットした着こなしを覗かせているその女性の正体は! 「ご主人様の操を汚そうとする輩は、この私――惣流キョウコが許しませんわ!」 「は?」 思わず呆然と固まってしまったのは衛宮士郎である。 ええと、ご主人様って誰? ――で、操を汚そうとしてる輩って――ひょっとして俺なのか? 女性比率の極めて高い衛宮家での日々の中で、女性に対する免疫と対処に慣れつつあった士郎であるが、さすがにメイド姿の美女を前にしては思考回路が正常に機能していないようである。 それ以前にナニゆえメイド服なのか? 前作を知らぬ士郎としては「これがアキバ系というものなのか? さすがは第三新東京市。守備範囲が随分と広いんだなー」と思わず妙な感心をしてしまう。 そんな彼の感想を耳にして、何とも困ったような、そして恥ずかしそうな表情を浮かべながら口を開くシンジであった。 「キョウコさん――その格好って、前回と同じ衣装なんですか? それに、ソレって作品が違いますし、そもそも今回はピンチでもなんでもありませんから。 ね?――士郎さん」 ね?――と、僅かに小首を傾げつつ、シンジ君の十八番、中性的な美少年の笑顔ビームが炸裂っ。 このクリティカルな一撃を至近距離で浴びた士郎は思わず頬を赤く染めてしまう。 そして高鳴る胸の鼓動。 いや、俺ってノーマルだからっ――と首を左右に振って否定しつつも、ほんのりと赤く染まった頬の色が、彼の穏やかならぬ胸の内を雄弁に語っていると言えるのかもしれない。 いやはや、セイバーさん。 意外な所に恋敵の伏兵が潜んでいたのかもしれませんぞ。 「“キョウコさん”――という事は、確か作中で君と結婚する少女達のお母さんだったよな? ええと――まあ、なんだ。 俺にもちょっと困ってしまう姉貴分がいるんだが、シンジ君も随分と苦労しているんだなぁ」 「えっと――士郎さん、ふだんのキョウコさんは、とっても素敵ですし、尊敬できる方なんですよ」 なんとかフォローしようとするシンジであるが、初対面でメイド姿を目の当たりにしている士郎に対しては、説得力は限りなく低空飛行であった事だろう。 あれ? ひょっとしてやっちゃった?――という微妙な空気を感じ取ったのだろう。 引き攣った表情を隠し切れないシンジと、そんな彼に同情の視線を送っている士郎の様子に、キョウコは幼子のように両手をばたばたと振り回して、ボディランゲージも加えながら自己弁護を始めた。 「こ、これは違うのよっ! あのっ、実はリツコから極秘情報だって聞いていたの! 冬木市から美少年キラーのオトコノコがやってくるから、シンジ君を密かにガードした方がいいって――」 「惣流副司令、人のせいにしないで下さいっ! 前回は絶好の機会を逃しているし、『今度の好機こそモノにして見せるわっ!』って、仰っていたじゃないですか!」 キョウコの主張を遮って現れたのは、三姉妹物語の作中においては生娘疑惑が残ってしまった赤木リツコである。 既に三十路に突入してしまった彼女であるが、マッドな部分が災いしてか、その美しさとは反比例して、モーションを掛けてくる男性は虚無に等しいという。 つまりは某ゼロのなんたらのご主人様の胸の薄さと同義であると言えようか。 それはさておき、日頃のネコ好きが影響してしまったのか、なぜかネコ耳とネコの尻尾のようなモノを身につけて、ある意味、キョウコよりも微妙な格好での登場である。 今日はあなたがご主人様にゃんっ!――とか某ツンデレ娘風に言い出したらどうしようかと危惧してしまう所である。 ――で、誰が美少年キラーなんだ、というツッコミ所はさておいて。 責任転嫁し合うように言い合っている美女ふたりを前にして、深いため息をついているシンジの肩をぽんぽんと軽く叩きながら、こちらも苦笑いを浮かべ無言のまま頷く士郎であった。 “お互い苦労が絶えないようだな” “士郎さんの所もそうなんですか?” ――と、声に出さずとも互いの気持ちを確認し合う二人であった。 ふむ。やっぱり、何気に相性が良いのかもしれない士郎とシンジである。 「とりあえず、放っておいて早く昼メシを作ってしまおうか」 「そうですね……。 そろそろ綾波がお腹をすかせている頃だと思うし」 「ウチも、セイバーのお腹の虫が可愛く合唱をしている事だろうしな」 最近は細身の少女ほど実は大飯喰らいというジンクスでもあるのかもしれない。 その様子を思い浮かべたのか、ぷっ――と、互いに笑い声を洩らしてしまう主人公ズの少年2人であった。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「「「「「「 いっただきま〜す!! 」」」」」」 ――と、礼儀正しく皆揃って手を合わせて食事開始の挨拶を終えたのは、今から10分ほど前の事である。 そして士郎とシンジの手料理の数々を堪能しつつ、空腹であった各々の胃袋事情もかなり落ち着きを見せ始めた頃と言えよう。 白熱を極めた次回作のヒロイン役主張合戦も既に沈静化し、異なる作品の垣根を越えて、仲良く談笑する少女達の姿が見受けられていたのであるが――。 「ところで姉さん、さっきの“惣流三姉妹物語にあって、騎士王の新たな戦いシリーズにないもの”って、いったい何のことだったの?」 特に意図する所などなかったのだろうが、ぽつりと口を開いたライムのその問いかけによって、事態は再び不穏な空気に転じてしまう。 そう――途端にそれまでの穏やかな雑談がぴたりと止んで、皆の視線が綾波レイに注がれていく。 そんな周囲からの視線を受けて、意味ありげに微笑を浮かべると、レイはいつものように淡々と話し始めた。 「大した違いではないの。 作中において、惣流家の三姉妹だけでなく、将来は私もライムも碇くんのお嫁さんになれる。 新幹線三姉妹の人たちも一緒に。 けれど、あちら側の皆さんは違うと思って。 ええ、衛宮さんと将来結ばれるのはたったひとり。 その他大勢の人たちは別の人生を歩むことになるわ」 核心を突いたその切り口に少女達は思わず腰を浮かして立ち上がってしまう。 「そ、そんなコト、判っているわよっ! だいたい私がその勝利者になるんだから、心配なんていらないんだから!」 「ミス・トオサカ、寝言は寝てから以下同文ですことよ。 シェロはエーデルフェルト家の名誉にかけて、必ずフィンランドに連れて帰りますわ」 「私なんて、もう二年も通い妻を続けているんですよっ! 先輩が首を縦に振ってくれるなら、今すぐにでも衛宮家に嫁ぐ準備が出来ちゃっているんですからねっ!」 「サクラ――貴女が“デキちゃって”と言うと、なんだか生々しさを感じます。 それはともかく、この流れなら私も言ってしまって良いみたいですね。 ええ、士郎は私のものです」 「みんな、判ってないみたいねー。 今の流行りは“妹萌え”なのよっ! 背徳の匂いを感じさせながら結ばれる義兄妹――という流れは、もはや王道なんだからっ!」 「イリヤスフィール――貴女は、そもそも設定上はシロウの義妹ではなく義姉なのでしょう? ええ、そんなコトよりも、大切な事を皆に告げておきましょう。 今も昔もこれからも、シロウのパートナーは私だけなのですから。 そう――これは決して負けられぬ戦いなのです!」 口々に改めて主張やら誓いを述べていく少女達。 一触即発の張り詰めた空気が漂っていく。 もっとも――「なあ、なんで急にウチのみんなは殺気立っているんだ?」とシンジに問い掛けている鈍感大将の少年だけは例外なのかもしれないが。 「でも――もっと穏やかな解決策はあるわ」 静かなその物言い。 しかし、レイのその一言に、再び少女達の周囲には沈黙が訪れた。 「“解決策”って? 綾波さん――具体的にお聞きして宜しいかしら?」 必死に冷静さを装う凛であるが、震えているその口調が、高まる緊張感と膨らむ期待の様子を隠しきれていない。 ごくり――と、何人もの少女たちが生唾を飲み込んで、レイの言葉を待った。 「第三新東京市。ある時は某最終決戦兵器が使徒と呼ばれる謎の生命体との熾烈な戦いを繰り広げたり――またある時は、トーストを口に咥えた転校生の美少女と主人公である少年が街角でぶつかったりして、やれパンツを見ただの、2人はデキてるの?――などと学園ラブコメモード一色に染まったりする実に不思議な街。 そして、私達の“惣流三姉妹物語”においては、複数の異性との婚姻が法的に許された舞台でもあるわ。 つまり――」 「「「「「「 つまり――? 」」」」」」 「もしも――衛宮さんご一行が私達の世界へ引っ越してきたならば。 そう、みんな揃って衛宮さんの奥さんになれるわ」 「「「「「 な、なるほどっ! 」」」」」 思わずユニゾンして大きく頷く少女達。 ただひとり、セイバーだけは納得できないような――それでいて、何の障害もなくシロウの妻になれるのなら、それもいいかも――とでも考えているような複雑な表情を浮かべている。 「それなら、姉さんも私も揃って衛宮凛、そして衛宮桜になれるんですね!」 「でも、私は遠坂家を継ぐ必要があるし、それに冬木市の霊地の管理が――――うーん、でもまあ、なんとかなるかな」 「衛宮ライダー、ことのほか良い響きです」 「し、仕方ありませんわね。 そのような事情なら、私 「ねえねえ、シロウの奥さんになって引っ越すのは構わないけど、アインツベルンのお城も一緒に引越ししても構わないかしら?」 「ええい、そんなコトよりもっ! 私――衛宮アルトリアが第一夫人である事は決して忘れないように願いたいっ!」 えーと、なんだか、すっかりと話が纏まってしまったみたいですね。 どうやら、これでようやく二番煎じのこのお話も幕を閉じる事が出来る雰囲気になって参りました。 「へぇー、もうすぐあのヒトたちがお隣に引っ越してくるんだね。 なんだか、ますます楽しくなりそう」 「そうね――皆さん、とっても面白そうな方たちばかりだし」 「ナニ言ってんのよ、ますます騒々しくなってしまうだけじゃない」 ――と、すっかり脇役と化してしまった惣流家の少女達の会話で締めてこのお話はエンディングを迎えるのである。 そう――次回作であり、また三周年記念の作品となるのは、『惣流三姉妹物語・外伝22・異世界からのお引越し』――と決まったのであった。
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−あとがき− ええ、勿論ラスト付近の次回作についての記述は全て冗談です(^^;;; 本気にされておられる方はいらっしゃらないと思いますし、またそのような作品を期待しておられる方は皆無でありましょうが、念の為に申し添えておきます。 さて――それはともかく、お詫びです。 本当に申し訳ありません。 大変、お見苦しいモノをお見せしてしまいました。 海より深く反省し、心からお詫び致します。 |
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