[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」


※この作品は、大抵の事なら寛大な心で許して下さる方のみ、お読み下さいませ。

 ――と、言いましょうか、あらかじめに申し上げるべきでしょうね。

 「申し訳ありません」

 ――このように、冒頭からお詫びするより他ない作品です。
 それだけは申し上げておきましょう(^^;;;




 常夏の地、第三新東京市。

 ええそれはもう、またまた前回、前々回からのコピペだろっ――と厳しくご指摘を受けようが、物語はここから始まる次第。

 前回と状況は異なり、ネタが枯渇している訳ではないし、月イチペースとはいえ一応は更新できている状況下である。
 本来ならば、ここでわざわざこの手のドタバタな座談会ネタ(しかも中途半端)のSSを入れる必要はないのだろうが、そこはそれ、当サイト的なお約束というものであろう。

 そして何と言っても、当サイトのメインコンテンツと化している掲示板の書き込みが遂に三千番に到達したのである
(注.前編の更新時点では到達していません)
 ならば、“三千”絡みで、某三千院なんたらのツンデレお嬢様を登場させても問題はあるまいし、ええいこうなったら、当掲示板で話題になっている(orなっていた)作品のキャラを総動員してしまえ――と安直な発想のもとにこの舞台の幕は上がっていくのである。

 冒頭ではあるが再度お詫びしておこう。

 ――いや、ホントに申し訳ありませんっ。





『嶺の上で――三番出汁・前編

(掲示板書き込み3000番到達記念企画)

by イイペーコー




「知らない天井だ」


 広い広い宴会場。
 辺りにはそのあちこちで同年代、或いはもう少し年長の少年少女達がそれぞれの円卓に集って、なにやら楽しげな雰囲気を漂わせながら色々と話しこんでいる様子であった。

 何故、こんな所に呼ばれてしまったのだろうか――と、もう三度目であると言うのにその雰囲気に慣れていない少年――碇シンジは、所在無く広い宴会場の片隅でぽつねんと天井を見上げていた。

 もっとも、そんな彼の事が気になって仕方が無いのに、どんな風に話し掛ければ平静を装って接する事ができるものなのか悩みに悩んでいる某セカンドチルドレンの少女が、少々遠目の位置の円卓テーブルの辺りから熱い視線を送り続けており、客観的には彼がひとり淋しく浮いている――という状況ではないようだ。

 ちょうどその時であった。
 そんな某ツンデレ美少女からの視線を遮るようにシンジの傍へと歩み寄ってきた3人の少女の姿があった。


「あー、いたいた。探したのよ、碇シンジくん」


「へ?」


 シンジが間の抜けた声をあげつつ、その声が上がった方へと視線を向けると、細身で小柄な少女達が笑顔を浮かべていた所であった。
 背丈はほぼ同じだが少女達の印象は三人三様でそれぞれ異なる。
 シンジに話し掛けてきた少女は、その三人の中でリーダー的な存在なのであろう――肩に届くほどのさらさらとした黒髪と吊目気味の円らな瞳が印象的である。

 その少女を挟むように右側に位置しているのは、日に焼けた小麦色の肌が目に眩しく、弾けんばかりの笑顔を浮かべ、見るからに活気に満ちた少女であった。
 しかし、陽気な性格を窺わせる反面、その透き通るような瞳には神秘的な雰囲気を感じさせている。

 そして、左側で恥ずかしそうに俯いて視線を逸らし気味にしつつ、それでもちらりちらりと上目遣いでシンジの方へ視線を向けているショートな黒髪の少女は、その雰囲気から物静かな性格を窺わせている。
 おそらくは三人の中では妹分的な存在なのだろう。

 それぞれにタイプは異なるものの彼女達を美少女と呼ぶに抵抗はあるまい。
 その証拠に、彼女達に囲まれて、シンジはあたふたとした様子で少女達に視線を向けながら頬を真っ赤に染め上げている。

 そんなシンジの様子を目の当たりにして、純朴そうなその雰囲気に好印象を持ったのか、少女達の中のリーダーと思しきその少女は更に間を詰めて笑顔を振り撒きながら口を開いた。


「ねえねえ、シンジくん。
 私達、あなたにお願いしたい事があるの。
 ぜひ手伝って欲しいんだけど」


 愛くるしい円らな瞳を輝かせながら、その少女はシンジの手を握り締めた。
 その瞬間――とあるテーブルの席に座っていた某セカンドチルドレンからの視線は殺気を帯びたものに変わっていく。


「ほい、ゆかり、いきなり本題はよくないネ。
 まずは自己紹介しないと」


「そうですよ、ゆかりさん。
 ほら、碇さんが戸惑っておられるみたいですし」


「ああ、ごめんごめん。それはそうよね、いきなり私達みたいなキュートな女の子達に囲まれたら焦っちゃうか」


「は、はぁ……」


 なんだか姐御肌でマイペースっぽい所はアスカに似ているなぁ――と暢気に思い浮かべるシンジであった。
 まさか、その当の本人の少女から射抜かれんばかりに睨まれているとはまったく気付いていない様子である。


「私の名前は森田ゆかり。
 ――で、コッチが一応は私の妹の森田マツリ、そしてこっちのコは三浦茜よ」


「ゆかりー、“一応”はよけいネ」


 似ていない姉妹だなぁ――というのがシンジの第一印象であった。
 見るからに生粋の日本人と思しきゆかりという少女と違って、小麦色の肌を持つ肉感的な魅力にも溢れているマツリの方は、エキゾチックな雰囲気を醸し出している。


「三浦茜です――碇さん、よろしくお願い致しますね」


 本質的には人見知りをする性格なのだろう。
 おそるおそるといった様子でショートな髪形の少女――三浦茜はぺこりと丁寧に頭を下げた。
 とはいえ、どうやら自身と似た性格なのかもしれないという第一印象が功を奏したのか、彼女のシンジに対するイメージはかなり良いものであったようで、逸らし気味であった視線はいつの間にか、じっと彼を見つめるようになっていた。


「え、あ、はい。
 碇シンジです。こちらこそ宜しくお願いします。
 それであの、僕に何の用事ですか?」


 なにやら多種多様の面々が集まった華やかな宴席で、わざわざ何の取り柄もない地味な存在の自分にどうして話し掛けてきたのだろうか――と、シンジは小首を傾げる。
 すると、ゆかりはその問い掛けを待っていましたと言わんばかりに口を開いた。


「シンジくん、SSA――ソロモン宇宙協会の事は知ってる?
 私達、そのソロモン宇宙協会で宇宙飛行士をやっているんだけど――」


「あー! 知ってます、知ってます!
 史上最年少で有人宇宙飛行に成功させ、更にはNASAの冥王星探査機オルフェウスを救ったというあの有名な“ガールズ”って、皆さんの事だったのですか!」


 ――どうやら、彼女達の功績については語るまでも無くシンジは知っていたようである。
 それどころか、数少ない彼の趣味の琴線に触れる程であったようで、尊敬の念を感じさせつつ目を輝かせている。
 これはぜひ後から記念にサインを貰わなくては――と思い浮かべるシンジであったのだが――。

 彼の想像を遥かに超えた提案がゆかりの口から告げられたのであった。


「私達のことを知っていてくれているのなら話は早いわ。
 実は今度私達SSAは、フランスのアリアン・スペース社の要請により、共同で有人月飛行を行う事になったの。
 けれど、アリアン・スペース社の宇宙飛行士は5人もいるんだけど、私達SSAの方は知っての通り3人しか居ないの。
 人数が少ないと現地での発言力も心配になるし、実際に宇宙に上がった後の事を考えると人手不足になる事は目に見えているし。
 そこで新たな宇宙飛行士を確保したいと考えた訳なのよ」


「はぁ――」


 ソレって極秘事項なのではないだろうか。そんな大事なことを無関係な自分相手に話してしまっていいのかな?――と、更にシンジは首を傾げていたのであるが、その思考を遮る様に口を挟んできたのはマツリであった。


「シンジは、身長はどれぐらいね? あと体重も」


「え、あ、はい。身長は153センチです。体重は40キロだけど……それが――」


 それが何か――と続けようとした所であったのだが、シンジが告げた身体的数値を耳にして、少女達は声を揃えて「おお〜」と驚きと喜びの色合いを感じさせる声をあげた。


「身長はバッチリですね。私達とちょうど同じですし」


「そうね、今回の計画に限定すれば多少大きくても構わないとは思っていたけど、その身長と体重なら、今後SSAのオービターに搭乗して貰う場合でも殆ど問題なさそうね」


「シンジ、合格ネ♪」


「えっと、すみません。
 何の話なんですか? 合格って」


「やだ、シンジくん、ここまで話してまだ判らないの?
 つまり、私達SSAは碇シンジくんを宇宙飛行士としてスカウトしたいっていう話よ」


 呆然とゆかりのその言葉を耳にして、シンジは数瞬であるが石化してしまったかのように固まってしまう。
 そしてようやく我に返ると驚きの声をあげたのであった。


「ええーっ! だって僕っ、オトコノコですよっ!?」


 いや、そもそも宇宙飛行士なんて――と続けようとしたシンジであったのであるが、その主張を遮る様に少女達は思う所を告げていく。


「ソコよ、ソコっ。
 私達オンナノコだけでは、話的にこれ以上の萌え要素を高める事ができないと判断したワケなの。
 それなのに私達の周囲にいるオトコ共ときたら揃いも揃ってオジサン達ばかりだし。
 だから同年代の男の子を加入させてラブコメ的な要素を飛躍的に向上させたいと考えたワケ」


「それに――碇さんなら、私、いいかなって」


「うんうん。シンジの事、気に入ったよ。
 将来はワタシの婿になってタリホ族の酋長になるといいネ」


 そんな会話を耳にして――某セカンドチルドレンの彼女が我慢できる筈もなかった。
 そもそも、ゆかりがシンジの手を握り締めたその瞬間から、彼女の怒りは最高潮に達していたのだ。

 それはもう人の領域とは思えないほどの尋常ならぬスピードでシンジ達のテーブルまで駆け寄ってくると、彼女――惣流・アスカ・ラングレーは、素早くシンジとゆかりの間に割り込み、燃え盛るオーラを漂わせながら仁王立ちしたのであった。


「ちょっと、勝手にウチのパイロットをスカウトしていいと思ってるの?
 それはネルフに対する敵対行動として考えていいと言う事なのかしら」


 きぃーっ、アタシのシンジの手を握ったっ!
 アタシのシンジを勝手にファーストネームで呼んだっ!
 それどころか婿にしたいとかなんとかっ!
 ええい、こいつら、許すまじっ!

 ――という本音は辛うじて抑えつつ、理路整然と言葉を並べ、それでいて恫喝するような姿勢を覗かせるアスカであった。

 そんな彼女に対して、ゆかりは持ち前の勝気な性格も手伝って怯むどころか更に胸を張った。
 そもそも本来なら高校に通っているほどの年令でありながら、既にNASAのスタッフを相手に対等に交渉して見せた経験もある彼女である。
 本気でネルフと敵対しても怯む事はないのかもしれない。


「確かあなたは最終決戦兵器エヴァンゲリオン、その弐号機のパイロットの惣流・アスカ・ラングレーさんね。
 悪いけど、私達SSAは既にネルフ上層部の了解は得ているのよ。
 昔と違って平和になった今では、無意味に適格者をこの第三新東京市に常駐させておく必要性はないとの判断をしたらしいわよ。
 シンジくん本人が了解したなら、ネルフから出向扱いでSSAに転属させる事も構わない――ってね」


「な、なんですってー!
 あのヒゲオヤジめっ! 自分の息子を身売りするなんて、どういう了見なのよっ!
 ――って、ソレはともかくっ、たとえウチの上層部が許したとしても、このアタシの目の黒い内は、そんな暴挙を許すと思ったら大間違いよ!」


「あら、なんの権限があって、そんな事を主張しているの?
 それにアンタの目、元から黒くないしっ」


 確かにアスカの瞳は青いよなぁ――と、暢気に頷いている場合ではない。
 おろおろと不安そうな表情を浮かべるシンジを他所に、森田ゆかりvs惣流・アスカ・ラングレーの激突は、今まさに始まろうとしていたのであった。







 一方、その頃。
 同じ宴会場の遠く離れたテーブルでは、幼い少女達を集めて何やら講義を始めている女性の姿があった。

 ちょっと変わり者が集い住んでいるという五月雨荘。
 その五月雨荘の住人のひとりである武藤環がその円卓の主であるようだ。


「いいかー? これから年上の男性のハートを射止める秘訣を教えるぞっ。
 みんな心して聞くようにっ!」


「「「「 はーいっ 」」」」


 興味津々――というよりは、真剣な面持ちで環の一言一句を待っているその少女達。
 それぞれに美少女と呼ぶに相応しい可愛らしさを有しているが、共通しているのは、皆幼いという点であった。
 その面々とは、三千院ナギ、九鳳院紫、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、葛城みかんの4人である。
 どうやらそれぞれに意中のターゲットは年上の男性であるようだ。
 もっとも、この幼い少女達の中には実年齢は既に18才を超えているキャラが混ざっているのであるが、それはオトナの事情という所である。


「本当にハヤテのっ――いや、その、年上の男性のハートを射止めるコトが出来るのだなっ!」


「うむ期待していいぞ。環の話はいつもためになることばかりなのだ」


 大富豪の娘同士意気投合したのか――それとも互いに年上の男性に恋焦がれている点が共通項となって話が弾んでいるのか。
 そしてどこか口調が似ているナギと紫である。

 13才という年齢にしては少々――いや、かなり小柄であると言えようか。
 その為に小学校低学年の紫やみかんと混ざっても違和感のないナギであった。
 一方、紫は男の子のような半ズボンを愛用している事と、長い髪と愛らしい顔立ちがとても印象的な美少女である。


「本当はシロウひとり陥落させるぐらい簡単なんだけど――でも知識として恋愛手法のひとつを身につけておくのも悪くはないと思うし。
 とにかく聴いてあげるから早く話しなさいよね」


 強がって見せつつも頬を染めているイリヤ。
 雪の精を思わせる程の白い肌故に赤みを帯びたその頬は一層に内に秘めた恥じらいを感じさせる。
 そして資産家の令嬢という点ではこちらも共通項であろう。
 名家の娘はお兄ちゃん的な男性に惹かれるという法則でもあるのかもしれない。


「えへへ、お兄ちゃん社長とらぶらぶになっちゃうのか。
 穂波お姉ちゃん達にはちょっと悪いけど、将来結婚するならやっぱりお兄ちゃん社長みたいに優しい人がいいし♪」


 なにやらその少年との未来像を思い浮かべているのだろう。
 少々場違いな感もある巫女服姿のその少女。
 桃色のツインテールの髪を揺らしながら、両手を顔の前で重ね、宙を見上げてそのまま視線を泳がせているみかんであった。

 そんな少女達と環の様子が気になって仕方が無かったのか――おそるおそると言った仕草を見せつつ、歩み寄ってくる少女二人の存在があった。


「あのっ。ひとつ私にもご教授願いたいのですがっ」


 どこか大人びた言葉遣いを覗かせながら環の方へと歩み寄ってきた小柄なその少女の名は南千秋。
 日頃は長姉への想いをストレートに表現している彼女であるが、年相応に異性に対して興味を感じるようになったのだろう。
 どこか父親に面影が似ているという少年の事を脳裏に思い浮かべているのかもしれない。


「右に同じ――です。
 私にも聞かせて下さい。
 個人的に興味があるものですから」


 小さなその手をあげて千秋と共に歩み寄ってきたその少女の名はホシノ・ルリ。
 見た目は幼い少女であるが、「電子の妖精」と称される程にコンピューター関連機器の操作に長けた逸材であると言う。

 表情の変化をあまり見せないルリであるが、今の彼女は頬を仄かに赤く染めている。
 どうやらルリもまた意中の年上の男性の事が気になっているのだろう。

 兎にも角にも環の講義を聴きにきた少女達は計6人。
 遠巻きにピンク色の長い髪が印象的な小柄な少女がひとり、チラチラと視線を向けながらその様子を窺っているものの、近寄ってくる様子はない。
「だって、サイトは年上じゃないし――」とかなんとか呟いている所を見ると、ハートを射止めたい男性が居るのは間違いないようであるが。


「さーて、それじゃ尺もないし早速説明するわよ。
 年上の――しかも、鈍感で乙女心に疎い男性のハートを射抜く秘訣。
 それは勿論、その男の子に対して自分の存在を“異性”として強く意識させる事よ」


「うむっ」

「なるほど、そうだなっ」


 息もぴったりと合わせて、こくこくと頷くナギと紫。
 合の手の声もあげながら、更に熱さを増した視線を環に向ける。


「そ、それでその秘訣とはっ!」


 千秋のその声に背を押されたように、少女達は皆揃って更に環の方へにじり寄った。
 そのただならぬ幼い少女達の迫力に内心圧倒されつつも、天性のお祭り女の血が騒ぐ環であった。


「心して聞け、乙女達よっ!
 ヤツらは君たちを愛しい存在と思いつつも、まだまだ幼い“子供”であると勘違いしている公算が高いのだっ!」


「た、確かにっ、ハヤテのヤツもその傾向があるぞ!」


「言われてみれば真九郎も、私を子供扱いする事が多いな」


「そうだろう、そうだろう。
 そこで、だ。
 鈍感な彼氏に、君達が既にオトナのオンナの領域に足を踏み入れている事――つまりは恋愛対象の女性であるという事をきっちり教えてあげる必要があるという事だ」


「「「「 おおおおお〜っ 」」」」


 思わず感嘆の声をあげる少女達。
 その様子を満足そうに頷きつつ見渡しながら、ニヤリと某特務機関の司令の某氏のような笑みを浮かべる環であった。


「恋愛は先手必勝。
 そのクリティカルな有効手段は――」


「ゆ、有効手段はっ――?」


 思わず鸚鵡返しに環のセリフをそのまま口にしてしまうルリ。
 小さな両の手をぎゅっと握り締めたその仕草を見れば、クールな面持ちの彼女も内心はかなり本気になっている事が伺える。


「べろちゅー、だ」


 そう告げながら――きっちりとデジカメを持って来ている事を再確認する環であった。
 彼女の脳内では、真九郎を押し倒した紫が強引に彼の唇を奪い――なおかつ濃厚なベーゼを交わす様子がありありと浮かんでいた。

 どうやらその瞬間を激写するつもりのようだ。
 へへへっ、これで当分の間はからかうネタが出来るぞ――という悪戯心のみが今の彼女を雄弁にさせているのだろう。


「なっ?!」

「はい?」

「ほう……」


 耳年増な性格も手伝って、その単語が指し示す意味が判ったナギやイリヤは酸性を示すリトマス試験紙のように頬を赤く染め上げる。
 そして、その“べろちゅー”の意味が判らなかったみかんやルリは首を傾げ、意味は判らぬものの、“ちゅー”という部分から、それがキスの種類である事を感じ取った紫は思わず感嘆の声をあげた。
 この辺りは7才とはいえ、既に意中の相手である真九郎とキスをした経験がある故に理解が早かったのかもしれない。


「こらこら、べろちゅーも知らないようではオトナの領域には程遠いぞっ。
 つまり、だ。
 好きな男と唇を重ねるだけでなく、強引にでも舌と舌を絡ませて、互いに相手の唾液を舐め取るような濃厚極まりないキスをするという事だ」


「「「「 おおおおお〜っ 」」」」


 またしても歓声をあげる少女達。
 その上気した面持ちから察するに、各々、意中の少年を相手に熱いディープなキスを交わしているシーンを想像しているのだろう。

 そんな中、実に真剣な面持ちを浮かべたまま、右手をあげた千秋は浮かべた疑問符を口にするのであった。


「先生っ! 私と藤おか――いえ、私とその年上の男性とでは身長差がありすぎて強引に唇を奪う事は困難であると思うのですがっ。
 おそらくは皆も同様でしょう。
 その場合はどうすれば良いのでしょうか?」


 そんな問い掛けに――後になって、この一言がとんでもない引き金になる事を知る由も無く、実にあっけらかんと環は答えた。


「確かに身長差を考えれば強引にキスをしてしまうなんて難しそうね。
 そして体格の差を考えれば、相手の男の子を押し倒す事も確かに困難。
 ならば、こんな方法はどう?」


 ごくりと誰かの生唾を飲み込む声が響く中、少女達の熱い視線を一手に集めつつ、環はこう続けたのであった。


「――寝起きを狙うのよ。
 寝ている時はだめ。キスされた事を覚えてなかったら仕方がないでしょ?
 だから、目が覚めたその瞬間を狙うの」


「「「「 な、なるほどっ! 」」」」







 そんな策略を少女達相手に環が語って聞かせているその頃。
 同じ宴会場の中の少女達が集まっている場所からは少し離れたテーブルで、年の頃は14才ぐらいであろうか――互いに同じ年齢ぐらいと思しき二人の少年が何やら話し込んでいる様子であった。

 どちらも背丈はさほど大きい方ではないようだ。
 二人の内では少しだけ背が高い方の茶髪の少年は、もう一方の少年のことをとても気に入ったようで、先程から笑顔を浮かべながら熱心に話しかけている。


「ねえ、シモン。
 ほんと、君とはなんでも話せそうな気がするよ。
 なんだか他人のような気がしないって言うか、なんて言うか」


「そうかな――ううん、そうだよね、うん」


 後に全宇宙をも救う事となる英雄もまだ今は14才。
 大グレン団のリーダーという肩書きを既に背負っているシモンであったが、今はどこにでもいる普通の少年に戻った感じすらある。
 そんなシモンの事を気に入った様子で熱心に話しかけている少年の名は藤岡である。
 まるで生き別れだった兄弟に出会えたかのような雰囲気すらあり、初対面であると言うのに、家庭や学校での日常から、彼自身が恋焦がれている少女の事なども実に細やかに話していた。

 その間、シモンはずっと聞き役に徹していた。
 元々、彼は決して雄弁な方ではない。
 後に相応な場数を踏んで成長を遂げていくシモンであるが、まだ現在は成長過程の途中であり、どちらかと言えば、自分から話し掛けるよりも受け身のスタンスの方が多かったのである。


「それでさ――こんなに僕は南の事が大好きで、何度か告白した事もあるんだけど、何故かその気持ちは南に伝わっていないみたいなんだ」


「それは、なんて言うか大変だね。
 でも、すごいと思うよ。きちんと告白できるなんて。
 俺には無理かな、たぶん」


「そんな事ないよ!
 シモンならきっと想いを告げる事ができると思うし――って、うわっ!?」


「あー、こんな所に居たのシモン! 探したわよ、まったく」


 我が事のようにシモンの事を心配する藤岡であったのだが――唐突に彼の言葉を遮るように現れた少女の姿に圧倒されてしまう。

 紅蓮の炎をイメージしたかのような赤いビキニを身に付けて、その魅惑的なボディを印象付ける露出度の高い姿で現れたのはヨーコであった。
 本来ならば、肩に背負ったライフルを見て、「おいおい銃刀法違反ぢゃないの?」とツッコミを入れるべき所なのであろうが、ついつい皆の視線はその豊かな胸へと注がれてしまう。
 年の頃は14〜15才ぐらいなのであろうが、魅力に満ちたその肢体は少々アンバランスの感さえあるだろう。


「おー、藤岡、こんな所に居たの?」


 それはまるで先程のヨーコのセリフを繰り返し聞いたのではないかと思えるようなイントネーションであった。
 ヨーコの隣に並んで現れたのは、先程から藤岡が口にしていた少女――南夏奈であった。
 黒髪のツインテールが元気に揺れて、活発な彼女の日常を雄弁に物語っているように感じられる。


「ヨーコ」

「南――」


 自身の名を呼ばれてそう答えたシモンと藤岡。
 こちらもまた実に声の響きが似ていると言えよう。
 その事に気づいたのは夏奈であった。


「あれ? 藤岡とそっちの彼って、なんだか声が似てるわね。
 顔はまったく違うけど、まるで兄弟みたい」


「そ、それを言うなら、南と、そちらの――ヨーコさん、でしたっけ?
 二人とも声が似ていると思うけど」


 胸の大きさは全然違うけど――と、続けなかったのは賢明であろう。
 それはともかくも、藤岡が感じた印象の通り、ヨーコと夏奈の声は実に良く似ている。
 更に言えば、声だけではなく、髪の色を除けばどことなく顔も似ているような印象もあり、加えて見るからに快活なその雰囲気が共通項のように感じられ、人によってはまるで二人が姉妹であるかのようにすら思えるであろう。

 そして見た目の印象だけでなく実際に波長があったという事であろう。
 すっかりと打ち解けあった感のあるヨーコと夏奈であった。


「ねえ、シモン。
 さっきから探しているんだけど、ニアが見当たらないのよ。
 あのコって、ほら、どこか世間知らずな所があるから心配なのよね」


「そう言えば、ちょっと探検してくるって、さっき言ってたけど――」


「だからって放っておいて良いワケないでしょ?
 シモン、あんたはニアのナイトみたいなものなんだから、ちょっとは心配しなさいよ」


「え、あー、そ、そうだね」


 ぶん!――と擬音が聞こえてきそうな勢いでシモンに迫ってきたのは、ヨーコのたわわな双丘であった。
 日頃から目の当たりにしている筈なのに、こうして間近で彼女の豊かな膨らみを目にすると、シモンは頬を真っ赤に染めて動揺してしまう。

 その穏やかならぬ胸の内を隠すためだろう。
 慌ててシモンは席から立ち上がると、その場から後ずさった。


「それなら、俺、ちょっとニアを探してくるよ!」


 慌ててくるりと身を翻し、その場から立ち去ろうとしたシモンであったが、素早く手を伸ばしたヨーコによって襟首の後ろをつかまれてしまう。


「ほら、ニアを探すなら私も一緒に行くから。
 それじゃあね、夏奈。またあとで」


 こうして藤岡と夏奈をその場に残し、広い館内を巡り、ニアを探して回る事になったシモンとヨーコであった。








 ちょうどその頃の事である――。
 大勢集まったこの宴席を盛り上げるべく、裏方と言えよう調理場では、実に多忙な状態になっていたのであった。


「こっちの揚げ物は終わったぞっ!
 士郎くん、そっちの姿造りはどんな塩梅だ?」


 得意の中華鍋を手際良く扱いながら叫んだのは、この場でただひとり調理師の資格を持っているテンカワ・アキトであった。
 比較的年令の近いメンバーが揃ったこの調理場の中ではリーダー的な存在であるようだ。


「あと2〜3分で捌き終わりますよっ!
 ――しかし、さすがにこんなに数が多いと大変だな」


 色鮮やかな大皿に切り捌いた鯛の姿造りを盛り合わせていく。
 それも1枚や2枚ではない。
 しかもこの作業を進めつつ、エビやイカなどの天ぷらを並行して調理しているのは、日頃から大所帯の衛宮家の台所を預かっている衛宮士郎である。
 彼もまたプロの料理人には敵わぬものの、そのテクニックは素人の域を既に超えていると言えようか。


「こっちのオードブルは終わりましたよ。
 士郎さん、手伝いましょうか」


「おう、さすがに仕事が早いなハヤテ君は。
 こっちは大丈夫だから、肉料理の下拵えを担当している真九郎君の手伝いを頼む」


 日頃から三千院家の執事として料理も含めた家事全般を担っている綾崎ハヤテにとって、このように大人数のパーティーに使われる料理の支度は得意中の得意であった。
 このように実に手馴れた様子で調理を進めているアキト、士郎、ハヤテの三人に比べるとややペースは劣るものの、日頃から腕を揮って手料理を何度も紫にご馳走している真九郎もまた充分に戦力になっているようだ。

 それでもなお宴席に集った客の数を考えると料理人の数が4人ではかなり厳しい状態であるようだ。
 料理を得意としていない平賀才人や伊庭いつき、そして武藤カズキは出来上がった料理の配膳で手一杯の様子であり、とにかく準備に時間のかかる下拵えには猫の手も借りたい状況であったのだ。


「これが終わってもデザートの準備があるんですよね……アキトさん、士郎さん、さすがにこれでは間に合わないかもしれませんよ」


 懸命に包丁で大量の肉を切り分けながら、その手を休めることなくそう告げた真九郎であったが、さすがに疲労の色は隠せない。
 もはや誰の目から見ても戦力不足である事は言うまでもあるまい。


「そうだな――応援を誰かに頼むしかないか。
 遠坂や桜を呼べば千人力だが、今日は、女性陣は“お客さん”扱いだからなぁ。
 さすがにちょっと頼み辛いか。
 ああ、そうだ――碇シンジ君を呼ぼう。彼なら充分に戦力になると思うし」


 前回の会合では一緒にシンジと料理をした事のある士郎は彼の腕前を良く知っていたのである。
 早速、誰かにお願いしてシンジを呼びに行かせようかとしたまさにその時であった。


「あの、宜しかったら、お手伝いを致しましょうか」


 透き通るような実に聞き心地の良い声が背後から掛かり、調理場の面々は皆揃って一斉に振り返った。
 するとそこには、天使のようなその声にぴったりと言えよう愛らしい少女がひとり佇んでいたのであった。

 彼女独特と言えようアイボリーと水色が適度に混ざり合うふんわりとしたショートヘアと、ピンク色の四つ葉のクローバーのような模様を浮かべた円らな青い瞳が印象的なその少女の名は――。


「き、君は――?」


「申し遅れました。私はニアと言います。
 実を言いますと、私は大グレン団の調理主任を担当しておりまして、こちらの調理場が気になったものですから立ち寄らせて頂いたのです。
 そしてどうやら、人手が足りなくて困っているご様子でしたので、ぜひお手伝いをしようかと」


 にこりと満面の笑みを浮かべながらそう告げた彼女の様子に、その場に居合わせた面々は揃って頬を赤く染めてしまう。
 色恋に関しては鈍感揃いの男達であったが、ニアの愛らしい仕草に惹かれる部分があったのだろう。


「か、可愛い――」


 思わずそう呟いたのは才人であった。
 もしもこの場に彼のご主人様であるツンデレ娘の彼女が居合わせていたら、「この犬〜っ!」と大声を上げながら激怒していた事だろう。


「た、確かに」


 同様に頬を赤く染めているいつきもまた彼女のほんわかとした雰囲気に心惹かれたのかもしれない。
 なにしろ、日頃、彼の周囲には気の強い少女達が揃い過ぎているのだ。
 ニアのような穏やかな性格の少女に惹かれる事があったとしても、それはやむを得ない所なのかもしれない。

 もっとも、その気が強い少女達――アディリシア・レン・メイザースや、穂波・高瀬・アンブラーにその事実を知られてしまったら、彼もまたただでは済まない事だろう。


「でも、斗貴子さんの方がもっと可愛いぞ」


 どうやら斗貴子命のカズキにとっては、可憐なニアの魅力も届かなかったようだ。
 もしも、この場に他の女性陣と共に津村斗貴子嬢が居合わせたなら、頬を赤く染めつつ、「カズキめ、バカなことを」と呟きつつも、どこか誇らしげに、少々控えめなその胸を張って自慢そうに微笑んでいた事だろう。

 そんな幾つかの“もしも”の話はさておいて、この場のリーダー格であるアキトは皆を代表するように口を開いた。


「大グレン団と言えば、シモン君が率いている所だったね。
 大グレン団はかなりの大所帯だと聞いているし、そこの調理主任なら大助かりだ。
 だが、今日は君も知っての通り、女性陣は主賓待遇で持て成す事になっているからなぁ……。
 その気持ちだけ頂いて、やはりこの場は俺たちに――」


「いいえ、そうは参りません。
 困っている方々を前にして見て見ぬふりなど、大グレン団の一員として出来はしませんから。
 どうぞ遠慮なさらずに、私に手伝わせて下さい」


 凛とした声で彼女がそう告げると、もはや反対する雰囲気は完全に一掃されてしまっていた。
 元々、人手不足という事もあり、渡りに船という状況であったのだ。


「それじゃあ、ニアさんのお言葉に甘えさせて貰おうかな」


「はい、お任せ下さい」


 疲労感と焦燥感が漂い始めていた調理場に大輪の花が咲いたような瞬間であった。
 しかし――彼らは知る由もないだろう。

 彼女の――そう、ニアの手料理がどれ程に驚異的な代物であるかという事を。









 或いは、かの有名な“ミサトカレー”をも遥かに凌駕するやもしれぬ強力な最終兵器が調理場に投入されてしまった頃――宴会場の一角では、とある身体的特徴を持つ少女達が顔を揃えていた。
 端的に言えば、“巨”か“微”――意図する所は無かったのであろうが、とある身体の部位について、その特徴が両極端に分かれた少女達が集う結果となっていた。


「まひろアイっー!」


 誰とでもすぐに仲良くなれる天然娘の本領発揮というところだろうか。
 テーブルに集った少女達――間桐桜、南春香、武藤まひろ、津村斗貴子、セイバー、そしてルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの6人。
 運ばれてくる料理の数々に舌鼓を打ちながら、少女達は穏やかに談笑していたのであるが、唐突に何かを思いついたように頭の上で100ワットの電球を光らせた(ように見えた)まひろは、両の手の指を丸めて双眼鏡のような形を作り、そのまま自分の目に重ねると、隣に座っていた桜の身体を舐めるように凝視し始めたのであった。


「な、なに、武藤サン?」


 元々、人見知りする傾向にある桜であるが、温厚で明るい春香とフレンドリーな性格のまひろに囲まれて、ようやくその場の雰囲気に慣れつつあった所であった。
 そこへ突如、奇声を発して自分の事を見つめ始めたまひろの様子に戸惑いを隠せなかったのである。


「ふっふっふ。実は“まひろアイ”を使うと、そのヒトのスリーサイズを看破するコトができるのだっ!」


「え――?」


「スリーサイズを? そんなまさか」


 呆気にとられる桜と春香。
 そんな“巨”組三人の少女達のやりとりを見ながら、騎士王セイバーは士郎の手料理を黙々と食べつつ一言で切り捨てた。


「くだらない事を――目測で判る訳がないでしょうに」


 するとセイバーの隣の席に座っていた斗貴子は、少々頬を染めつつ口を挟んだ。


「いや、彼女の特殊能力は軽視できない。
 実は私も以前、あの“目”で見抜かれてしまった事がある」


 斗貴子の脳裏には、かつてまひろ達と一緒に銭湯へと行った時の思い出が蘇っているのだろう。
 もっとも――斗貴子のとある数値は、その当時の頃より僅かではあるが成長を遂げているという。
 その背景として、カズキの尽力の賜物でもあるのだろう――という噂もあるようだ。


「ほう、貴女がそう言うのなら間違いないのでしょうが――あまり実益はなさそうな能力のように思えますね」


「確かにその通りだ。
 しかし、彼女は本当に人の良い性格をしているし、実に心優しい子なのだ。
 もしもあのような振る舞いが気に障ったのなら、私が彼女に代わって謝ろう」


「いや、その必要はないかと。
 先程の私の物言いとは矛盾しますが、あのように場を盛り上げる術はある意味では、やはり有益なのでしょう。
 それに目を見れば判る。
 天真爛漫な一面と共に相手を思いやる一面も併せ持っているようだ。
 さすがは貴女の思い人の妹君――という所だろうか」


 落ち着いた物腰と戦場の中で培ってきた戦士としての資質について互いに波長の合う部分があったのだろう。
 出会ってまだ短い時間であったが、セイバーと斗貴子は、自然と互いを認め合い、そして意見を尊重し合う関係を構築できたようである。

 そんな二人の会話を他所に、ターゲットにされてしまった桜は、衣服を身に付けているのだからその必要はない筈なのに、両手を使って胸を隠そうとする。


「ちょっと、武藤サンっ。
 どうして、私のスリーサイズを知ろうとするのっ?」


 頬を真っ赤に染め上げた桜の様子を更にまじまじと見つめながら、まひろは悪びれる様子もなく、それどころか満面の笑顔を振り撒きながらこう答えた。


「だって桜さんってば、さーちゃんと声がそっくりなんだもんっ!」


 いや、さすがにソレはマイナーすぎるネタだろう――とツッコミが入る所なのかもしれない。
 兎にも角にも“まひろアイ”の眼力による分析が終わったのか、声も高らかにその値を発表するまひろであった。


「桜サンのスリーサイズぅ〜!
 上から85、56、87――続いて体重はっ!」


「だめぇー! ソレだけは絶対にダメですっ!」


「それなら続いてのターゲットは南春香サンっ!」


「へ?! わたしっ?!」


 こんな人前でスリーサイズを発表されてしまっては堪らないと思ったのだろう。
 一瞬、頬を染めて怯んだ様子を見せた春香であったが、某校では伝説として語り継がれている“番長”としての一面が顔を覗かせた。

 すっ――と伸ばされた春香の腕。
 その手の五指は素早く、そして確実にまひろの顔面を捉えたのであった。


「ひぃっ、アイアンクローっ?」


「まひろサン――判っていますよね?
 これは明らかに個人情報保護法に違反しているのですよ」


 華奢で穏やかそうなその容姿からは想像もできない力技となったようだ。
 もっとも、その痛さよりも、彼女のただならぬ迫力に恐怖してしまったと言うべきだろう。
 まひろは、がたがたと肩を震わせて怯えてしまっている。


「はいー、もうしませんから、許して下さいー」


 そんな姉の“活躍”をたまたま通りかかって目撃してしまった夏奈は、ニヤリと笑みを浮かべつつツッコミを入れる。


「ハルカー、こんな所でも伝説を作り続けているのかい?」


「わわっ、カナっ、これは違うのよ――って、こら、ノートにメモしたりしないでー!」


 どうやら、南春香の“番長伝説”にまた新たな1ページが付け加えられた模様である。
 そんな騒々しい会話が飛び交う中、所謂“微”組の代表格、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、先程からずっと、少し離れたテーブルで続いている環の講義に耳を傾けていた。


「そっか、“べろちゅー”が有効手段なのね……。
 今度、試してみようかしら……」


 どうやら幼い少女達の輪の中には入って行けなかったものの、ちゃっかり環の話だけは聞き入っていたようだ。
 もっとも、彼女の場合は既に何度も意中の相手である才人とキスを交わしているだけに、実行に移したとしても、その行為だけでは満足な結果が得られない可能性もあるだろう。
 それどころか、その場の雰囲気次第では、彼女の両親から激しく叱られてしまうような行為にまで発展してしまう引き金にもなりかねないと言えよう。

 フライングして、うら若い乙女が“母親”になってしまわないように願う次第である。
 そもそもそんな洗濯板のような胸では赤ん坊に母乳を与えることすら――などとツッコミが入ってしまう所なのかもしれないが。








 こうして――多少の言動について問題はあれども、一部の円卓を除き、どのテーブルも概ね和気藹々とした雰囲気を醸し出しつつ、楽しげな様子で推移していったのであるが――。

 とある少女達4人が陣取っているそのテーブルは、見るからに一触即発と思しき殺気を漂わせていたのであった。


「なるほど、わたくしのシェロと同じぐらい、ミス・メイザースの伴侶は良人のようですわね」


「いっ、いいえ、べ、別にその、イツキは伴侶とかまだそんな関係ではなかったりするのですがっ。
 ええ、でも確かに私にとって最も心を許している異性である事は否定致しませんし、既に深い絆で結ばれたパートナーである事も間違いではありませんけれど」


 外見的に良く似た二人であると言えようか。
 鮮やかな金色縦ロールの髪の二人――ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトとアディリシア・レン・メイザースが並ぶと、大輪の向日葵が天に向かって鮮やかに咲き誇っているように思える。

 そして似ているのは外見的な特徴だけではなかったようだ。
 魔術の名門貴族の令嬢という共通項は勿論のこと、押しに弱そうな鈍感少年に心惹かれている点も同様であるようだ。

 そしてまたもうひとつの共通項――互いに恋敵が存在しており、その恋敵が日本人でありながら西洋の血も流れているという点であろう。


「なんか、言葉の節々に聞き捨てならない事が沢山あったんやけど。
 ウチの社長がいつからアディと深い絆で結ばれたパートナーになったんだが説明して貰おうかしら」


「右に同じね。
“わたくしのシェロ”ですって?
 いつからミス・エーデルフェルトはそんな妄想癖に苛まれるようになってしまったのかしら」


 怒りのオーラを漂わせながらそう告げたのは、穂波・高瀬・アンブラーと遠坂凛である。
 栗色のセミロングヘアと少々角張った形の眼鏡が印象的な少女の穂波、そして名は体を表す――の諺通りに凛とした振る舞い(概ね擬態であることが多いが)と元気に揺れる黒髪のツインテールが印象深いと言えよう遠坂凛。

 どちらも共通しているのは、意中の相手がその道において未熟者であり、本来ならば常に異性として接したいと考えているのに、その意に反し、師として厳しく接しなければならない事が多いという点であろう。
 付け加えるならば、声が似ているという点も――以下同文である。

 更には、好きな異性を前にするとなかなか素直になれずに、ついつい厳しい態度で接してしまうという生粋のツンデレ娘であるという点も同様と言えよう。
 もっとも、その点に限って言えば、ルヴィアゼリッタとアディリシアも全く同じである。
 要するに似た者同士4人が集ってしまっているという構図であった。

 そのような同属嫌悪という部分もあるのだろうが、基本的に同じ道において高みを目指す者同士であるが故に競い合い、そしてぶつかり合う事も少なくは無い。

 しかし、もっと根幹な部分――決して譲れない乙女の戦いとでも言おうか。
 或いは女として生まれた本能の成せる業と言っても過言ではあるまい。
 愛した男の遺伝子を授かって子を宿し、次の代へと、自らの生きた証を残したい。
 その為なら、森羅万象の全てを駆使してでもその戦いに勝たねばならない。

 そのように意識しておらずとも、乙女としての本能が彼女達を奮い立たせるのだろう。


「ミス・トオサカ――どうやら、今日こそは決着をつけなくてはならないようですわね」


「望む所と言っておこうかしら。
 そして誰が士郎にとって、永久不変のパートナーであるのか、その高慢ちきなお嬢様に教えてあげるわよ」


「ルヴィアお姉様――このアディリシア・レン・メイザースも手伝わせて頂きます。
 そして、魔術結社の首領同士という絆を深めていかねばならない正統的な方向性に理解を示すことのできないそこの平社員にも正義の鉄槌を下して見せますわ」


「やれるもんなら、やって貰おうやないの。
 凛さん、そんなワケやから手を組ませて貰うで。
 そして“金髪ドリル娘”は、所詮正ヒロインのライバル的な立ち位置に過ぎないって事を教えてあげましょ」


 四大魔神、立つ――。
 いやいや、四大怪獣大激突という雰囲気だろうか。
 誰がゴジラやモスラで、誰がラドンでキングギドラなのやら。

 兎にも角にも、やはり一触即発――である。

 ここは諸悪の根源であろう――衛宮士郎と伊庭いつきを連れてこなければ、無事平穏に収まる事はあるまいと思われていたその時であった。




「きゃあーーっ!」




 緊迫感に満ちたその悲鳴が響くと、激突必至と思われて殺気立っていた少女達の表情が途端に変貌を遂げ、隙を見せず、辺りを窺い、足音ひとつさえ聞き逃すまいと言った魔術師としての顔になった。


「今の悲鳴は――?」


 その悲鳴に反応したのは、凛やルヴィアゼリッタ達だけではない。
 そもそも、この場には各方面において常人の域を超えた少女達が数多く集っていたのだ。
 緊急の事態に遭遇したとしても、ただ慌てふためくような事は決してあるまい。


「今の声は、まさか――ニアなの?」


 ニアの行方が判らず辺りを探していたヨーコは、途中からシモンとは二手に分かれて、なおも彼女を探していたのである。
 そのニア当人の声――それも危機迫るかのような悲鳴を耳にして、ヨーコは焦りながらも、声の上がった方へと駆け出していた。

 素早く反応したのは、ヨーコだけではない。
 セイバー、そして斗貴子もまた風神の如く宴会場の円卓の間を駆け抜け、悲鳴の上がった方へと向かう。

 現場への先行はその3人に任せ、周囲への注意を払い、外敵の存在、侵入者の類、或いは火災など突発的な災害の可能性を視野に入れて分析を進めながら現場へと向かう凛、穂波、ルヴィアゼリッタ、そしてアディリシアであった。

 つい先程まで、肝心のシンジをそっちのけで激論を交わしていたアスカとゆかりも同様に表情を引き締め、セイバーや斗貴子の後を追う。

 一方、春香と桜は素早く医務室へと向かった。
 状況によっては救急車を手配しなくてはならないのだろうが、とりあえずは医薬品やAED(自動体外式除細動器)などの有無を確認しておこうと思ったのであろう。

 こうして――今日、初めて顔を合わせたばかりの少女達であったが、抜群のチームワークを覗かせていたのである。





「ニアっ、大丈夫っ!?」


 逸早くその現場へと駆けつけたヨーコは、何らかの特別な部屋と思しきその入口の辺りで、ぶるぶると身を震わせながら跪いてしまっているニアの姿を見つけたのであった。


「よ、ヨーコさん……。
 こっちに来ては、だめ、です。
 そして、この曲を聴いちゃ――」


 この曲を聴いては駄目だと懸命に告げようとするニアであったが、半ば意識が朦朧としているのであろう。
 言葉が途切れてしまって、思う通りに話せない様子のニアであった。

 それでも必死に立ち上がろうと、前のめりに跪いてしまっているその小さな身を起こそうとしている。


「ニア、何があったの?」


 すぐにニアの傍へと駆け寄って、彼女の身体を抱き起こそうとしたヨーコであったのであるが――。




『君の事 みっくみっくにしてあげる〜♪』




 実に心地良いその歌声を耳にした途端、ヨーコもまたニアと同じ様に目眩を感じてしまったのか、その場で跪いてしまったのである。


「こ、この歌声は――?」


 歌声が聞こえてくる方へと視線を向けると、怪しげな一室のドアが開かれており、その部屋の中は、まるで宇宙空間であるかのように、周囲の壁、そして天井、更には床の存在が感じられず、異様な雰囲気を醸し出している。

 そしてその漆黒に包まれた空間の中で、宙に浮かぶように佇んでいる少女の姿があった。
 抱き締めれば折れてしまいそうなその細い身体と、くるぶしまで届く長さの青緑色のツインテールの髪が実に印象的であると言えよう。

 背格好で判断するなら年の頃は15〜16才ぐらいであろうか。
 もっとも、幼いその顔立ちに目を向ければ、もう少し若いのではないかと感じてしまう。

 そして――その少女は快活に踊りながら歌い続けている。




『――だから ちょっと覚悟しててよね』




 その歌声を耳にする度に、段々と力が抜けてしまうような――そんな感覚に苛まれてしまうヨーコであった。

 それでも辛うじて、原因を探ろうと部屋の中を見渡そうとするヨーコ。
 そんな彼女の目に留まったのは、更に異様な光景であった。

 最初は室内の暗さの為に気がつかなかったものの、段々と目が慣れてくると、室内のそこかしこに人が倒れている状況が判ってきたのである。
 おそらくはその光景を目の当たりにして、ニアは悲鳴をあげたのだろう。


「あれは、まさか――シモンなの?」


 よく見ると、倒れている人影には、ニアにとってもヨーコにとっても大事な人と言えようシモンも含まれていた。

 また、ヨーコ自身は今日出会ったばかりであった為に名前は覚えていなかったり、聞いていなかったりであったものの、シモン以外の倒れている人影もまた見知った面々であった。

 そう――その異様な空間で倒れていたのは、今日、この会場に集っていた士郎やハヤテ、真九郎など少年達全員であったのだ。


「これは、いったい――?」


 はたして何が起こったと言うのか。
 シモンは勿論のこと、ここに集った面々は一騎当千の者が多かった筈である。
 何故こんなにも、揃いも揃って易々と術中に陥ってしまったのか――と首を傾げるヨーコであった。


 その時である。
 声にならなかったヨーコの問いかけにまるで答えるように――その少女はこう言ったのであった。


「どうやら、みっくみっくにされてしまったみたいだな」


 その声に反応してヨーコが振り返ると、そこには金髪ツインテールの小柄な少女――三千院ナギが仁王立ちしていた。
 いつの間にこの場へと辿り着いていたのか――他の皆よりも先行していた筈のセイバーや斗貴子が駆けつけてくる前に、ナギはこの場へと足を踏み入れていたのであった。

 そして、例の歌声から身を守る為であろう。
 大きめのヘッドホンを耳にあて、なにやら他の音楽を聴いているようである。


「主と執事は一心同体だからな。
 ハヤテの危機に私が真っ先に駆けつけるのは当然と言うものだ。
 ちなみに、今、聴いているのは、“正義のロボット ゲキ・ガンガー3”だぞ。
 ささきいさお氏が歌う名曲なのだ」


 誰も問い掛けていないと言うのにそう答えつつ、兎にも角にもこの歌声をシャットアウトしなければ、話が進まないと判断したのだろう。
 ナギは素早くドアのノブに手をかけると、「待っていろ、ハヤテ――すぐに助けてやるからな」と呟きながらその怪しげな部屋のドアを閉めた。

 すると、ようやく先程から聞こえていた歌声は掻き消え、意識が途切れそうになっていたニアとヨーコは、どうにか半身を起こす事ができたのであった。

 ちょうどそこへ到着したセイバーと斗貴子。
 更には、遅れて駆けつけてきた凛、穂波、ルヴィアゼリッタ、アディリシア――そして、アスカとゆかりという面々を前にして、ナギはその小さな身体で大きく胸を張りながら、凛とした声でこう告げたのであった。


「彼女の名は、初音ミク――電子の歌姫だ。
 本来の彼女はその名が示すように、VOCALOID2シリーズの“初めての音”であり、将来の音楽の可能性から“未来(ミク)”と名付けられたネット界にとってのバーチャルアイドルであり、希望の星なのだ。

 ――だから、これだけは言える」


 後から遅れてきた面々は事情が判っていない。
 しかし、通路に倒れ半身を起こしているヨーコとニアの様子、そして真剣な面持ちを浮かべているナギの様子からただならぬ事態に直面している事を察した。

 故に――詳しい事情を知っていると思しきナギの説明に黙って耳を傾け続けた。

 その周囲の皆の様子を窺いながら、ナギは毅然とした姿でこう続けたのである。


「心してかかろう。
 敵は初音ミクにあらず。
 ――初音ミクを操っている黒幕の存在があるぞ」


 楽しく、そして穏やかであった筈の宴席の場は一転し、辺りは緊迫した雰囲気に包まれた。
 はたして少女達は、囚われた格好の少年達を救う事が出来るのか?


 こうして――ヒロイン達の戦いの幕は上がったのである。





- つづく -




 さて――まずはお詫びです。
 誠に申し訳ありません。

 このようにキャラを多くすれば、それぞれの描写が薄っぺらいものになってしまう事。
 それは書き始める前から判っておりました。

 それでもなお、このようなお話を書いたのは、当サイト内の掲示板を日頃からご覧になって下さっておられる方々への感謝の気持ちをひとつの作品として残したかったからであります。

 ご覧になって頂ければお判りになられると存じますが、当掲示板はまさに雑談の場でございまして、書き込むジャンルに予め取り決めた枠はなく、年齢指定を要する直接的な表現を除き、楽しい話題ならば、ありとあらゆるネタを取り上げて語り合う場でございます。

 今回のお話はその当掲示板上で過去に話題になった作品のキャラを可能な限り登場させているという構成になっておりまして、後編においては更に人数が増えて参ります。

 「つまらん話だ」――と感じておられる方が圧倒的に多数派でありましょうが、どうぞご容赦下さいませ。


 さて、最後にもうひとつお詫びがあります。
“掲示板書き込み3000番到達記念企画”と銘打ちながら、実際にはまだ3000番には遠く届いておりません。

 本当に申し訳ありません――ご容赦頂ければ幸いです。

 なお、この作品の後編は、掲示板の書き込みが3000番に到達した日に更新できるよう準備を進めて行く予定でございます。







◆前編・登場キャラ一覧(計35人/12作品)


・新世紀エヴァンゲリオン
碇シンジ
惣流・アスカ・ラングレー

・Fate/stay night
衛宮士郎
セイバー
遠坂凛
間桐桜
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト

・天元突破グレンラガン
シモン
ニア
ヨーコ

・ロケットガール
森田ゆかり
森田マツリ
三浦茜

・紅
紅真九郎
九鳳院紫
武藤環

・みなみけ
南春香
南夏奈
南千秋
藤岡

・ハヤテのごとく!
綾崎ハヤテ
三千院ナギ

・機動戦艦ナデシコ
テンカワ・アキト
ホシノ・ルリ

・武装錬金
武藤カズキ
津村斗貴子
武藤まひろ

・ゼロの使い魔
平賀才人
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール

・レンタルマギカ
伊庭いつき
アディリシア・レン・メイザース
穂波・高瀬・アンブラー
葛城みかん

・各VOCALOID作品
初音ミク

[Return]