
※この作品は、大抵の事なら寛大な心で許して下さる方のみ、お読み下さいませ。 ――と、言いましょうか、あらかじめに申し上げるべきでしょうね。 「申し訳ありません」 ――このように、冒頭からお詫びするより他ない作品です。 それだけは申し上げておきましょう(^^;;; |
「心してかかろう。 敵は初音ミクにあらず。 ――初音ミクを操っている黒幕の存在があるぞ」 凛としてそう告げた三千院ナギの言葉が辺りに響く。 異空間が存在している部屋で意識を失い、結果としてそこで(精神状態としては)囚われた格好の少年達。 その少年達とは、この日、縁合って集った碇シンジ、衛宮士郎、シモン、紅真九郎、藤岡、綾崎ハヤテ、テンカワ・アキト、武藤カズキ、平賀才人、そして伊庭いつきの10人である。 その少年達を救うべく少女達は力を合わせ、未だ正体の見えぬ敵と戦う事となったのであった。 |
『嶺の上で――三番出汁・後編』 (掲示板書き込み3000番到達記念企画) by イイペーコー |
催眠音波とでも表現するべきか。 ネット界方面の情報に詳しいナギの説明により判明した少女の名――初音ミク。 彼女のその心地良い歌声を耳にしていると、その場に立ち続ける事が出来なくなり、遂には意識を失ってしまう。 故に扉一枚隔てたその向こう側に少年達が倒れていると言うのに、その場に居合わせたニア、ヨーコ、セイバー、斗貴子、凛、穂波、ルヴィアゼリッタ、アディリシア、アスカ、ゆかり――そしてナギの計11人の少女達は文字通り手も足も出せない有様であった。 そこへ遅れてやってきた春香と桜を加え、美少女13人衆という様相を呈し、第三者がその光景を目の当たりにしたならば、実に華やか極まりない美しく咲き誇る花々の庭園に足を踏み入れたという印象を感じる事だろう。 しかし、その少女達に笑顔はない。 逼迫したその事態に辺りには重苦しい雰囲気が漂っていた。 「ねえ、ナギちゃんが持っているそのヘッドホンを耳に付けたまま、この部屋の中に入って藤岡くん達を一人ずつ部屋の外へと運び出したらどうかしら?」 ミクの歌声を聴かないようにヘッドホンを耳に当て、他の曲を聴きながらであれば、なんとかなるのではないか――そう提案した春香に対して、ナギは固い表情を崩さなかった。 「どうだろう――はっきりと断定はできないがおそらくは無理だと思う。 この扉の向こう側の室内は我々の科学の常識が通用しない別次元だぞ。 中に足を踏み入れた途端に、そこらで市販されているこの程度の音楽機器など全く機能しなくなる事も予想しなくてはならんだろうな」 そう答えたナギであったが、代案をすぐに思い浮かべる事はできなかった。 如何せん情報が少なすぎる状態である。 この状況下で的確な判断を行う事など困難であると言えよう。 「ちょっとー、そんな悠長なコト言ってる間に、アタシのシンジにもしものコトがあったらどうするのよ! ああもう、この際弐号機を投入して物理的に部屋ごと奪取しちゃおうかしら」 物騒なことを口走るアスカであったが、使徒との戦いが全て終わり、平和になった今となっては、既に弐号機を含めエヴァ各機は凍結されてしまっている。 現実的にはそのような方法など取れる筈も無かった。 ならば結界を張って侵入を――などと得意分野で主張を覗かせる凛達であったが、その方法もまた効果があるのかどうか定かではない。 斗貴子もまた焦りを隠せずに厳しい面持ちを浮かべ、そして後悔の念を抱いていた。 (核鉄があれば――自力でカズキを助けて見せると言うのに) ホムンクルスとの戦いが終息し、錬金戦団の指示に従い核鉄を返却した今の彼女は、培ってきた鍛錬と数え切れぬ戦闘経験により、優れた戦士としての能力は有しているが、あくまでも一般人としては優秀という域に過ぎない。 誰もが打開策を模索していたが、相手は異世界に陣取っていると思しき難敵である。 すぐに名案を思い浮かべる事が出来る者など居なかった。 その頃――年長者達が顔を揃えている通路からは少し離れた宴会場に居残っていた少女達の前に怪しげな三人組が姿を見せていた。 「全国の女子高生の皆さん〜♪ おっと、間違えちゃった。 えー、本日お集まり頂きました見目麗しいお嬢様方。 只今、隣の隣のそのまた隣の部屋でちょっとしたトラブルが起きてしまいまして。 ああ、ご心配はありませんですよ、はい」 「そうでまんねん。 大丈夫でまんねん」 少女達の前に現れた女一人、男二人という構成の三人組。 野暮ったいタキシードを身に付けた男二人は、一方が細身、もう一方は、背は低めだががっしりとした胸板が印象的な体格の男である。 その二人を従えるように中央に位置して凛とした姿勢を覗かせて、少々露出度の高いスーツ姿の女性はおもむろに口を開いた。 「お客様――実は、当館内に不審者が侵入しておりまして、只今、別室ではその対応に当たっておりますの。 その不審者はごく少数でありまして、おそらくはすぐに身柄を確保する事が出来ると思いますが、僅かでも危険性がある以上、お客様には直ちに安全な場所へと避難して頂きたいと思う次第ですわ」 不審者が侵入したという情報に、その場に残っていた面々は一様に不安な面持ちを浮かべ、ざわざわと傍にいる者同士、あれこれとその胸の内を口にしていく。 「よりによってハルカ姉さまが居ない時に不審者だなんて」 「ゆかりさんも悲鳴が上がった方へ行ったまま帰ってこないし、どうしたらいいのかしら」 「お兄ちゃん社長や穂波お姉ちゃん達は大丈夫かなぁ……」 そんな少女達の中では一番の年長者のまひろは兄譲りの肝の大きさを見せて、落ち着いた口調で、その三人組に声を掛けた。 「あの、あなた方はここの施設の担当の方ですね? それで私達はどこへ避難すれば良いのですか? それに私達は身内やお友達と逸れているんです。 どうしたらいいですか?」 その問いかけに待っていましたと言わんばかりに笑顔を見せて、何やら目を光らせたその女性は、揉み手をしながら口を開いた。 「はいはい、私達に全てお任せ下さいませ。 これからすぐに皆さんを安全な場所へご案内致しますわ。 そして離れ離れになっている方たちもすぐに保護して、同じ避難場所へとご案内致しますからご安心下さい」 施設の担当者と思しきその女性の言葉は、少女達に安堵感を導いた。 少々、見た目には不審な面は感じられるその三人組であったが、緊急事態に直面し、大半の少女達はその事に気付けず、つられるように案内されるままに移動しようかとしていたその時であった。 「ウソだな」 小柄ながらも威圧感すら覚えさせる声が安堵感漂うその宙を切った。 ずいと一歩、そして更にもう一歩、少女は前に出て、その怪しげな三人組の前に歩み出ると、正面から相対する姿勢を滲ませて、眼光鋭くその三人を睨み据えた。 「おまえ達の言っている事は何から何まで全部ウソだな」 「なっ! このクソガキっ――い、いえ、お嬢様。 私達がなぜウソを言っていると言うのかしら?」 三人の中ではリーダー格と思しきその女性はかなり短気な性格のようだ。 表情を引きつらせ、抑えようとしているものの、肩がわなわなと震え始めている。 そんな態度を覗かせる女を前に、紫は怯むことなく、そして堂々とした姿勢を微塵も崩すこともなく、はっきりとした口調でこう告げたのだった。 「理由など、ない。 だが、私にはわかるのだ。 おまえ達はさもここの施設の関係者であるのかのように振る舞っているが全くのデタラメだし、これから安全な場所へ誘導するということもウソだ。 ああ、不審者が紛れ込んでいるという事は本当だろうが、それはおそらくはおまえ達の事だろう。 それに若そうに見えるその容姿も怪しいぞ。 本当は30年ぐらい年をごまかしているのではないのか」 九鳳院紫に嘘は通用しない。 彼女は理屈ではなく、感覚的なところで、嘘かどうかを見抜く能力を有しているのである。 胸に響く凛としたその彼女の主張を信じたのだろう。 周囲の少女達もまた、じろりと敵意を覗かせて三人組を睨みつけた。 「ほい、ウソはよくないネ」 「ウソつきはドロボーのはじまりと言います」 「はじまりどころか、きっとこの人たちって既にドロボーさんなんだよ、きっと」 だめ押しのように、マツリ、ルリ、そしてみかんがそう告げると、その女の堪忍袋の緒はやすやすと切れたようだ。 「だぁぁぁぁっ! このクソガキどもめっ! 30年も前からこの業界で活躍してきたこのドロンジョ様をバカにするなんて、随分といい度胸してるじゃない。 ボヤッキーっ、トンズラーっ、構わないからやっておしまいっ! ナマイキな小娘たちにお灸を据えてやるんだよっ!」 「「アラホラサッサ〜!」」 そう掛け声をあげた男ふたり――ボヤッキーとトンズラーは前に踏み出て少女達を威嚇する。 いかに人数では勝っていても、その大半は幼い少女達ばかりである。 特にトンズラーは元プロレスラーということもあり、仮に大の男を何人も相手にしようとも力でねじ伏せてしまう程の怪力の持ち主であった。 このまま少女達はドロンジョ達ドロンボー一味の魔の手に落ちてしまうのか――そう思われたその時である。 「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……」 すらすらと呪文を詠唱していく桃髪の少女――ルイズの姿がそこにあった。 かつては“ゼロのルイズ”と揶揄嘲笑されたことの多かった彼女であるが、今では立派な虚無の魔法の担い手である。 その彼女が――ここは私が皆を守らなくてはと強く感じたのだろう。 少女達の輪の中から前に出ると、手にしていた杖を振りかざした。 「な、なにを始める気だい?」 ルイズのその様子にただならぬ雰囲気を感じたのだろう。 ドロンジョは思わず一歩二歩と後ずさりを見せた。 「エクスプロージョンっ!」 ルイズがそう叫ぶと、まさにその呪文の名が示す通り、すさまじい爆発がドロンボー一味を襲ったのであった。 その衝撃をまともに受けて吹き飛ばされた三人組は壁に打ち付けられ、そのまま重なるように床に崩れ落ちた。 見ると、身につけていた着衣はボロボロである。 常人ならば、かなりの手傷を負っていてすぐに動ける状態ではあるまい。 しかし驚いたことに、ドロンジョ達は実に逞しく、すぐに立ち上がって見せたのであった。 「あいたたた、やってくれたわね、小娘。 もう承知しないんだからね」 「爆発なら、ワイら毎週のように受けてるよって慣れてまんねん」 「そういうコトよん。 さあて、今度はこっちの番であるからして――ポチッとな」 細身の方の男――ボヤッキーは、懐から怪しげな機械を取り出すと、その表面に突起していたボタンを押した。 すると、宴会場の床がひび割れて、その裂け目から巨大な豚の形を模したロボットが現れたのだった。 ドロンジョ達はすぐさまそのロボットに乗り込むと、見下ろすように少女達の前で仁王立ちして見せたのであった。 「きゃあぁぁぁっ!!」 これにはさすがに少女達も恐怖感を覚えたのだろう。 慌てて逃げようとするものの、倒壊し始めた会場から脱出するのは困難であったのだ。 その時である。 この場に居残っていたもう一人の魔女っ子と呼ぶべきか。 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、まったく逃げようともせず、ドロンボー一味が操るロボットの前に立つと、その澄んだ声でこう叫んだのであった。 「やっちゃえ、バーサーカー!」 マスターのその命令に従うように、それまでは霊体化して姿を消していた彼女のサーヴァント――バーサーカーはその巨体を露にして、手にした石の斧剣を大きく振りかざしながら、ドロンボー一味のロボットに襲いかかった。 「■■■■■■■■■■■■■―――!!」 その真名は、ギリシア神話の英雄ヘラクレスである。 まさに最強のサーヴァントであるといえようバーサーカーが、いかに現代科学の先端をゆくボヤッキー製のロボットが相手であったとしても、後れを取ることなどありえる筈もなかった。 「な、なんなのよ、こいつらは〜!?」 予想もしていなかった苦戦にドロンジョは焦りを隠せない。 そうこうしている内に、バーサーカーの猛攻は続き、両腕、両脚が大破したその豚型ロボットはまるでダルマのような姿と化していたのであった。 「ドロンジョ様、もうこれ以上は持ちそうにないですよ〜」 「ええい、仕方ないわね。 ここは退却よっ。 基地に戻って、今度は“うろたんだーロボ”で逆襲してやるんだから!」 「「アラホラサッサ〜!」」 すると、胴体を残し頭の部位だけが射出されたそのマシンは、天井を突き破り、そのまま飛び去って行ったのであった。 「ちっ、逃げられてしまったわね」 大きく穴があき、青空が見えるようになってしまったその天井を見上げながら苦笑いを浮かべるイリヤであった。 いかにバーサーカーといえども、逃げ足にかけては他に並ぶ者なしと断言できようドロンボー一味が相手では、仕方のない結果であったと言えよう。 兎にも角にも当面の窮地は去った。 するとそこへちょうど帰ってきたのは、年長組の少女達であった。 「みんな大丈夫?」 「ハルカ姉さま!」 親愛の情の極みであると言えようその対象である姉の姿を見た途端、心から安堵したのだろう。 春香のもとへ駆け寄ってそのまま彼女に抱きついて離れず、極まったのか流れる涙を抑えきれない千秋であった。 こうして、合流をはたした少女達総勢23人は、お互いの情報を交換し、置かれている状況と敵の存在を把握することができたのであった。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「すると、その三人組は去り際にこう叫んでいたのだな? “今度はうろたんだーロボで逆襲してやる”――と」 確認するようにそう問いかけたナギに頷いて答えるイリヤであった。 すると、再び考え込んだナギであったが、ひとつの推論を導いたのか、俯いていた顔を上げて周囲の面々をゆっくりと見渡した。 「“初音ミク”に続いて、“うろたんだー”とは――。 これはおそらく電脳世界からの攻撃が展開されると見ていいだろう。 ならば、こちらも同じ土俵で戦いたいものだが、さてどうしたものか」 電脳世界。 敵と思しき存在が、彼女の評したその名の通りの世界に陣取っているとしたならば、打つべき手は限られてしまうだろう。 「ああもう、ネルフのMAGIが使えれば、なんとかなるのに!」 そう口にするアスカの主張は尤もであった。 目には目を。 電脳的な異空間から攻めてくる敵が相手ならば、確かにMAGIがあれば応戦は可能なのかもしれない。 しかし、ネルフ本部への支援を求める時間的猶予があるのかどうか、それは誰にも分らなかった。 その時である。 ニヤリ――と無垢な少女らしからぬ笑みを浮かべながら口を開いたのは“電子の妖精”ことホシノ・ルリであった。 「こんなこともあろうかと――ええ、こんなこともあろうかと、こんなものを準備しておきました」 “こんなこともあろうかと――”というフレーズを口にする喜びをひしひしと感じているその様は、某整備班班長を思わせる程である。 終戦後、彼女の性格に少々変化があったのかもしれない。 さて――そんな彼女が指さした先には、頭がすっぽりと覆えるのではないかと思えるサイズのフードと、そこから繋がっているケーブル類、そして数台の端末機がスポットライトを浴びて鎮座していたのであった。 「こ、これは、まさか、機動戦艦ナデシコ第12話で使われた、意識だけを電脳世界に侵入させる事ができるスグレモノのあのアイテムなのか!?」 「説明的なセリフに感謝します。三千院ナギさん。 そう、これはオモイカネを遠隔操作できる端末機と、精神のみを電脳空間へと転送する特殊なヘルメット型端末です。 これを使えば、私達も敵と同じ空間へと赴くことができます」 ルリの説明を受けて、途端に辺りからは、「おおお」と歓声の声が上がる。 詳しい説明はまだ行われていないもののイメージ的には理解が進んだのか、早速、一部の勝ち気な性格の女の子達は手を上げて立候補をし始めた。 「アタシが行くわ! シンジを惑わしたその初音ミクとかいうオンナに一言文句を言ってやらないと気が済まないし」 「それなら私が行くわよっ! ウチの犬に手を出した罰はしっかり受けて貰う必要があるんだからっ!」 「ちょっと待った! どうやらアッチの世界って宇宙空間っぽい感じだし、それなら宇宙空間での活動に場慣れしている私の方が向いていると思うけど」 それぞれに譲ろうとしない雰囲気のアスカ、ルイズ、そしてゆかりであった。 そんな彼女達を諌めるようにその間に割って入ったのはナギである。 彼女もまた愛する少年――綾崎ハヤテが囚われの身と化しており、胸中は穏やかでは無かった。 しかし、ここに集った少女達の中では、ただひとり初音ミクの存在に詳しい知識を有している者として、冷静に判断しなくては――と内心は必死に耐えていたのである。 「慌てるな、まったく。 肝心の情報を聞くことを忘れてどうする。 さて、ホシノ・ルリよ、このシステムを用いて電脳空間へと転送可能なのは何人までなのだ?」 「サポートとして5人の端末操作が行える者が居ることを前提条件として、電脳空間へと向かえるのは僅かに5人です。 私はこのシステムの体験者ですから、水先案内人として一緒に向かわなくてはなりません。 従って、私以外に端末操作に長けた方が必要になります」 「ああ、それなら私達に担当させてくれませんか」 そう言って手を上げたのは、三浦茜である。 元々、名門ネリス女学院の優等生であった彼女にとって、その基礎は充分であった。 付け加えるならばソロモン宇宙協会での訓練によって、実践的にも端末操作はプロ級のレベルにまで達していたのであった。 「ほい、それなら、マツリとゆかりも端末操作担当ネ」 「えー、私は電脳世界の方に行きたかったのになぁ」 そうボヤいてみたものの、ガールズ3人組と肩を並べる程のオペレート技術を持ち合わせている者がこの場に居合わせているとも思えず、ゆかりは苦笑いを浮かべつつもマツリの提案に同意の姿勢を覗かせた。 「それなら私もお手伝いします。 キータッチはそんなに速くはないですけど、精一杯頑張りますから」 謙遜しつつ手を上げたのは、南春香であった。 あらゆる面で万能のスペックを有する彼女ならば、充分に対応可能と言えようか。 「はい、はいー! こう見えても、私はオペレーターの達人なのっ! どんと任して下さいっ!」 そう主張して見せたのは兄譲りの天然娘、武藤まひろである。 いつの間に準備していたのか、ちゃっかりとネルフ本部仕様のオペレーターの制服を身に付けている彼女であった。 はたして本当にオペレーターの達人なのかどうか疑問符が付くところであろうが、兎にも角にもサポート要員は、森田ゆかり、森田マツリ、三浦茜、南春香、武藤まひろの5人に決まったのである。 「さて、肝心の電脳世界への突入組だが、どうしたものか。 我々の科学の常識が通用しない世界だろうし、そこでは魔術の類も通用するのかどうか判らないだろうしな」 電脳世界であるその空間へと進めるのは5人のみ。 ならばバランスの取れた構成にせざるを得ないと言えよう。 戦闘能力に長けた者ばかりが集まっても、情報が無ければ前に進めない。 逆に情報のみに特化した組み合わせでは戦う事ができないだろう。 そんな時であった。 それまでは沈黙を守り続けていた騎士王セイバーが動いた。 「ここは私の出番だろう。 シロウの剣となり盾となる事を誓ったこの身だが、今はここに集った皆の為に剣を振るおうと思う」 その彼女の申し出に否定的な意見など出る筈もあるまい。 名高きブリテンの英雄アーサー王ことアルトリア・ペンドラゴン以上の戦力など居る筈もないのだから。 「うむ、セイバーにはぜひ来て貰いたいぞ。 電脳世界の体験者であるホシノ・ルリ、そして当面の敵である初音ミクに詳しい私こと三千院ナギを加えて、これで3人は確定だろう。 あと残る枠は2人だが――」 「私が行きます」 彼女独特と言えようアイボリーと水色が適度に混ざり合うふんわりとしたショートヘアと、ピンク色の四つ葉のクローバーのような模様を浮かべた円らな青い瞳が印象的なその少女が手を上げた。 「ニア、あなたもう身体は大丈夫なの?」 心配して声を掛けたヨーコ自身、今まさに立候補しようとしていたタイミングであった。 ようやく歩けるように回復したとはいえ、先程まではミクの歌声を聴いてしまった影響で意識が朦朧としていた有様であったのだ。 ヨーコの心配も尤もであろう。 そんなヨーコを、ニアは決意を秘めた瞳で見つめながら、すっと懐からある物を取り出した。 それはシモン愛用の品。 普段は彼が肌身離さず持ち歩いている大切なものであった。 「それって、シモンのコアドリルじゃないの? いったいどうしてそれを持っているの?」 「判りません――気がつくと、こうして握りしめていました。 でもきっとこれはシモンの意思だと思うのです。 俺の代わりにグレンラガンを頼む――と。 きっとシモンはそう言っているのだと思うのです」 「グレンラガンって言ってもここには――」 グレンラガンの機体は厳重にカミナシティに保管されており、今回の事態に対して使用できる筈もなかった。 そもそもラガンはシモンが居なければ起動すら出来ないマシンであり、ニアの主張はおよそ現実的ではなかった。 しかし、ニアの真っ直ぐなその視線は決して揺るがない。 強い信念がそこに宿っているように思えたのであった。 「大丈夫です。 シモンのドリルは天を突くドリルなのですから。 たとえ電脳世界であったとしても、貫き通すのみ――です」 「これで決まりね。 とーぜん、最後の1枠はアタシが貰うわよ。 誰が何と言っても、その役回りは譲ったりしないんだから!」 そう強く主張したのは、先程からずっと手を上げっ放し状態のアスカであった。 ニアとはまた違った意味で、その強い信念は揺らぎそうに無かった。 降りかかる火の粉は強引に払い除け、シンジという名の眠れる森の王子様を叩き起してでも助け出すという気持ちで満ち溢れている様子である。 「本当はひとりぐらい魔術に精通した方が居た方が良いと思ったのですが――まあ、いいでしょう。 そもそも、このサイトの傾向を考えれば、セイバーさんの他に惣流さんとニアさんが選ばれるのは必然なのでありましょうから」 ぼそりと溜息混じりにそう呟くルリであった。 まあ、それは確かに否定出来ない。 当サイトとしては、二次創作のジャンルとして、Fateとエヴァとグレンラガンを――げほんごほん、であるのだから。 結果――多くの残った面々から不満の声は上がったものの、電脳世界へ向かうメンバーは、セイバー、惣流・アスカ・ラングレー、ニア・テッペリン、三千院ナギ、そしてホシノ・ルリの5人に任される事となったのであった。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「オモイカネとの連動、順調です。 システム、オールグリーン」 「ほい、こっちも準備OKネ」 事前にルリから配布されたマニュアル通りに操作を進め、慌ただしく端末のキーボードを叩いていた茜やマツリ達から、準備が整った事が告げられる。 「よーし、それじゃあ、天下無敵の美少女戦隊の出撃ね!」 「び、美少女戦隊?」 「惣流さんの思考パターンを認識しました。 ある意味、今すぐでも、ナデシコに乗艦できる人材なのでしょうね」 アスカのどこか幼稚なネーミングに苦笑いを浮かべるルリであったが、その一方で感謝の念も浮かべていたのだ。 いかに選ばれし精鋭とはいえ、初めての電脳世界への転送を前に強張ってしまってもおかしくない状況下であり、アスカの発言が周囲の緊張感を解きほぐしたと言えよう。 「さて、いきますか」 ルリがそう告げたその次の瞬間――ヘルメット型の端末装置を頭に被っていた5人の少女達の視界は一転していた。 まるでそこは宇宙空間。 自らの足は地を踏もうとするものの、そこには何もなく、不安定に宙に浮かんだ状態であった。 「うわわわわっ、みなぎるぅぅぅっ!」 おいおい、その掛け声はガラットだろう――というツッコミの声はさておいて。 そう叫んだアスカの身体は、先程まで身につけていたワンピースから一転し、深紅のボディが勇壮な印象を感じさせるエヴァ弐号機の姿へと変貌を遂げていた。 見た目には弐号機のボディに顔だけがアスカのままという状態である。 手には薙刀状の武器、ソニックグレイブを握り締めている。 武装したセイバーと並んでも、決して見劣りしない力強さを感じさせていると言えようか。 そして一方――シモンから預かったコアドリルを握ったまま、その手を高々と宙に突き上げたニアはこう叫んだのであった。 「グレンラガン、スピンオン!」 すると――ニアの全身は脚部から段々とパーツが装着されていくような形で、逞しいグレンラガンのボディが彼女の華奢な身体を覆っていったのであった。 弐号機と一体化したアスカ同様、顔だけはニアのままで、身体はグレンラガンという姿へと変貌を遂げたのである。 「おお、武装したセイバーを中心にして、エヴァ弐号機とグレンラガンが並ぶ光景を見る事が出来るとはな。 なかなかにこれはレアなシーンだぞ。 カメラで録画できない事が残念でならんな」 そんな感想を口にしたナギはと言えば、二頭身サイズに身体の大きさが変わっており、同様に小さくなったルリと共に、グレンラガンと化したニアの両肩に座っている。 「さあ、それでは敵に向かって進みましょう。 たとえどんな敵が待ち構えていたとしても、この私の剣で一刀両断にして見せますから」 そう言って、茜達のサポートに従い、当面の敵であると言えよう初音ミクが居る方向へと向かおうとしたセイバーであったのだが――。 「ぬあぉっ」 何も存在していない筈の空間であると言うのに、まるで壁に激突してしまったかのように顔面をしたたかに打ちつけた格好のセイバーは、美少女らしからぬ声をあげつつ、その場に転倒してしまう。 もっとも、宇宙空間のように重力が無い状態であるのだから、転倒といっても宙を漂っているような様子である。 「これは、まさか?」 「うそっ、ATフィールド?」 少女達のその声が届いたのか。 全く別の空間で、とあるロボットを起動させ、様々な計器類をチェックしながら幾つものボタンをポチッとな――と押していたボヤッキーは、誰に聞かれたという訳でもないのに口を開いたのであった。 「この天才科学者ボヤッキー様の手によって作られた“うろたんだーロボDX”には、ありとあらゆる卑怯な武器が搭載されてるのよー。 ちなみに遠隔操作のこのATフィールドは、全国使徒協会推薦です、はい」 いつから使徒達の間でそんな互助会的な団体が出来たのだろうか――と言う所であるが、それはさておいて。 空間が歪んで見える程に重厚なATフィールドを前に、アスカ達は一歩も前に進めない状態と化していたのであった。 「ああんもう、このATフィールドってば中和できないっ!」 かつて使徒と戦っていた頃を思い出し、ATフィールドの中和を試みるアスカであったが、結果はその言葉通り、固く閉ざされたその壁は揺るぐことなく、彼女達の行く手を阻んでいたのであった。 「こうなったら、私がギガドリルブレイクで突破口を開きます」 「いや、それなら、エクスカリバーの方が効果はあるだろう。 ここは任せて貰おうか」 互いに必殺の技を繰り出そうかと主張するニアとセイバーであったが、そんな2人を制したのはナギであった。 「いや、それは最後の手段だ。 この先、どれ程に敵が待ち構えているのか判らんと言うのに、序盤から力を出し尽くしてしまうような戦い方は得策とは言えないぞ」 「しかし、それでは、どうやってここから前に進めば良いのでしょう?」 やはり、自身のドリルで突破すべきだろうと、再度、ニアが提案しようとしたその時であった。 現実世界に残ってサポートをしているゆかり達からの通信を受けたルリが口を開いた。 「待って下さい。 向こう側に残っている皆さんがなんとかしてくれるそうです」 「え? なんとかするって――でも、どうやって?」 首を傾げるアスカであったが、そんな彼女の目に映ったのは巫女服姿の幼い少女であった。 しゃん――と神楽鈴が宙を切るように鳴り響く。 電脳空間の中で宙に浮かんだその幼い少女――葛城みかんは、まるで風の精霊のように軽やかな舞を見せた。 そう――それは、彼女が有する能力のひとつ、禊ぎの舞であった。 みかんは手に持った玉串を振りかざしつつ、祝詞を口にする。 「とほかみ、えみため、とほかみ、えみため、かんごんしんそんりこんだけん―― はらいたまい、きよめたまう――」 すると、彼女の禊ぎで邪気が払われたかのように、辺りには清らかな空気が満ち溢れていく。 「驚きました。 あれが葛城家の神道の真髄。 圧倒的な霊的加護による絶対結界とでも評すべき所なのでしょうか。 とにかく――三浦茜さんからの情報では、葛城みかんさんの禊ぎによって初音ミクの歌声を一時的に遮断して、皆さんはあの異空間と言うべき部屋に直接足を踏み入れたそうです」 その情報が正しかった事を示すように、アスカ達の前には、次々と少女達が姿を見せたのだった。 しかも、並の少女達ではない。 あえて表現するなら、新世紀の魔法少女軍団とでも言うべきだろうか。 そう――必死に禊ぎを続ける葛城みかんを中心にして現れた少女達は彼女を含めて総勢8人。 遠坂凛、間桐桜、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト、アディリシア・レン・メイザース、穂波・高瀬・アンブラー、そしてルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールである。 「ハイル! 我が上にありし月の女神よ! 月光とヤドリギの加護もて、この災いを穿て!」 途端に現れた月の光を浴びつつ、その加護の下、そう叫んだのは穂波であった。 そして重厚なATフィールドへの突破口を刻むべく、ケルト魔術の秘術を込めたヤドリギの矢を投げ放つ。 その直後――穂波が刻んだ突破口を無駄にするものかと阿吽の呼吸でソロモン魔術の呪文を詠唱するアディリシアであった。 「従え! 我が手にあるソロモンの印を見よ! されば汝、王の御名において、我が命に従うべし。 いけ!フォルネウス!29の軍団を支配する公爵よ!」 その命に従い、召喚されたのは宙を舞う巨大な銀鮫。 ソロモン72柱の魔神の1柱で、地獄の大侯爵と称される座天使である。 マスターであるアディリシアの意思を察したのだろう――フォルネウスはその巨体を泳ぐように揺らすと、一気に速度を高めてATフィールドへ向けて突進し体当たりをして見せた。 しかし、それでも重厚なATフィールドは破れない。 穂波が放ったヤドリギの矢の効果と、フォルネウスの体当たりの衝撃によって、歪みが生じているものの、まだ突破するには更なる力が必要なのだろう。 「早くっ――あまり、長くは持たない、からっ」 初音ミクの歌声から皆を守るために必死に禊ぎを続けているみかんの表情に苦痛の様子が窺える。 本来の彼女の神道魔術の源から離れた空間で、その小柄な身体を駆使して禊ぎを続けているのである。 限界はもう間近に迫っていた。 ならば速効で勝負を決めるより他ない。 言葉を交わすことなく理解し合ったのか、凛、桜、ルヴィアゼリッタ、そしてイリヤスフィールは互いに頷きあった。 「ここは貴女に任せます! トオサカの当主の力を見せてみなさい!」 「姉さんっ、私の力も全て託しますっ!」 「そうね、破壊するなら、お転婆なリンの魔術の方が向いていると思うし」 そう叫んだルヴィアゼリッタ、桜、そしてイリヤスフィールは、それぞれに指先の皮膚を切って赤い鮮血を滴らせた。 凛はその三人の指先をすぐさま口に含み、簡易的なれどそれぞれとパスを繋げ、彼女達の魔力を根こそぎ集めたのだった。 そしてアベレージ・ワンと呼ばれる五大元素使いの魔術師として、その力を示すべく、懐から幾つもの宝石を取り出すと、持てる魔力の全てをその宝石に込め、一気に解き放った。 「――――Anfang! 「Neun,Acht,Sieben――――! Stil,sciest,Beschiesen ErscieSsung――! Fixierung,EileSalve――――!」 元より長い年月を経て魔力を込めてきた宝石に、ルヴィアゼリッタ、桜、イリヤスフィール、そして自身のありったけの魔力を込めた乾坤一擲の凛の一撃は、遂にATフィールドに亀裂を生じさせた。 そして残す矢はただひとり。 虚無の魔法使い、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールである。 小柄なその姿なれど、放つその魔術は戦艦までも一撃で沈める力を秘めている。 「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ・オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル・スヴュエル カノ・オシェラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル――ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリノスィトゥスス・カタストロフェー!」 長い詠唱の後、虚無の呪文が完成した。 その次の瞬間、ルイズは円らなその瞳をしっかと開き、手にしていた杖を振りかざすと、一気にその魔法を解き放った。 「エクスプロージョンっ!」 その凄まじい一撃は、遂に難攻不落と思われたATフィールドを突き破った! 8人の魔法少女が集い、その力を結集し、アスカ達の行く手を遮っていた厚い壁を粉砕して見せたのであった。 「はううっ、もう限界だよ〜」 禊ぎの舞を続けていたみかんであったが、意識が朦朧とし始めているのか、足下が覚束ない。 彼女がそう呟くように告げると、すぐさま身を翻した穂波は、みかんの身体を抱きかかえながら、異空間の部屋から出口へと向かう。 「撤収や、もう限界やで」 「それでは、皆さん、後はお願い致しますわ」 次々にその部屋を後にして行く少女達の最後尾で、アスカ達に向かって言葉を残すと、アディリシアもまた初音ミクの歌声の影響下から逃れるようにその場を後にしたのであった。 時間があれば倒れている少年達を抱きかかえて連れ出したかった筈であろう。 しかし、唯ひとり禊ぎを行えるみかんの体力を考えると、すぐさま再びその方法を取れるとは思えなかった。 「あとは任せておいて! ホント、助かったわ!」 魔法少女達の活躍によって活路を見出したアスカ達5人の少女達は、破壊されたATフィールドの残骸を後にして、その先へと進んで行ったのである。 その様子をモニター越しに監視していた3人組の姿があった。 ドロンボー一味こと、ドロンジョ、ボヤッキー、トンズラーの3人である。 そこは電脳空間ではなく、ごく普通の現実空間。 彼らの基地のケージ内に固定されている人型のロボット――何故か青いマフラーを巻いている“うろたんだーロボDX”のコクピット内から、アスカ達や魔法少女達の活躍を目の当たりにしていたのであった。 「なかなかやりまんな、アイツら」 「これぐらいでくたばってしまうようなら、私達の傘下に入る資格はないわよ。 まあ、私としては、あの小憎たらしい小娘達は部下に加えなくてもいいんだけど。 そうね、綾崎ハヤテ君や衛宮士郎君達みたいに、頼もしくて可愛いオトコノコ達を私の下僕にできれば今回はそれで充分なワケだし」 説明しよう! どうやら今回のドロンボー一味の目的は、初音ミクの歌声を悪用し、シンジや士郎たちを洗脳した上で、下僕として一味に加える事だったようだ! 「でも、ドロンジョ様、ちょっと計算外なことが――。 あんな風にオモイカネとやらを使って意識だけを電脳空間に移行させたもんで、ボクちゃんが原曲を改変して作った催眠曲の効果があの5人には全く効いていないみたいですよん。 このまま侵攻を許して、初音ミクが居るところまで辿り着いてしまうとやっかいな事になりそうですねー」 「ボヤッキー、そう思ってるなら、さっさと次の卑怯な手を打ちなさいっ! 口より手が早いドロンジョである。 いや、今回の場合は足が早いと言うべきか。 そのスラリとした長い脚を駆使して、言い終える前にボヤッキーを蹴り飛ばしていた。 「ああんもう、判ってますですよー。 まったくもって、ドロンジョ様ってば乱暴なんだから。 それではまた、ポチッとな――と」 ボヤッキーがなにやら怪しげなボタンを押すと、今度はアスカ達5人の少女達の周囲には長細い触手をゆらゆらと動かす巨大なイソギンチャクが現れた。 その数は1体や2体どころではない。 後から後からその数を増やし、一気に少女達の周囲を囲んでしまったのである。 「きゃぁぁぁっ、ナニこの気持ちが悪いのはっ!?」 思わず悲鳴を上げたアスカの問いかけに答えるようにボヤッキーはニヤリと笑みを浮かべながら呟いた。 「ナニって、もう見ての通り。 イソギンチャクのホムンクルスですよん。 気をつけないと、触手が色んなところをニギニギしちゃうかもねー」 驚くべきはボヤッキーの科学力であろうか。 既に壊滅し存在していないLXEの技術をどこから入手したのか、イソギンチャク型のホムンクルスの培養に成功していたのである。 もっとも、そこは電脳空間。 イソギンチャクの形は成しているものの、生物ではないのだろう。 ホムンクルス化したその物体を何らかの技術によってトレースして、電脳空間に再現していると言えよう。 兎にも角にも、再び大ピンチのアスカ達であった。 アスカはソニックグレイブ、ニアはグレンラガンのドリル、そしてセイバーは剣を駆使して、迫りくる触手をなぎ払っていくものの、多勢に無勢という有様であり、遂にはボヤッキーの忠告の通り、四肢を触手で絡められてしまう。 「こ、こら、どこを触ってんのよっ! シンジ以外のヤツは触っちゃだめなんだからっ!」 触手によって両腕両脚を拘束され、身動きできないアスカは思わず悲鳴に近い声を上げていた。 その状態はセイバーやニアもまた同様である。 二頭身キャラと化したナギやルリもまた身体を触手によって縛られている。 「このままではマズイな。 いや、そのなんて言うか、エ○ゲーの類だと、このまま触手にあんなコトやこんなコトまでされてしまう展開だぞ」 13才という年齢で何故にエ○ゲーの類の知識まで有しているのか、そんなツッコミ所はさておいて、ナギが心配する通りかどうかは別として、このままでは前に進めない状況である。 そんな窮地の様子は通常空間側の少女達にもオモイカネの端末を通して伝わっていた。 「困ったわ――もう暫くの間は、みかんちゃんの禊ぎで初音ミクちゃんの歌声を無力化する事はできないし。 いったいどうすればいいのかしら」 困ったようにそう呟いた南春香の背後から一緒にモニターを見ていたヨーコは、背負っていた超電導ライフルを手にすると、意を決したように面持ちを引き締めて口を開いた。 「私がいくわ。 何分、いえ何秒もつかは判らないけれど、あの部屋に入って、このライフルでみんなを助けだして見せるから」 みかんの禊ぎのない状態であの異空間の部屋に足を踏み入れれば、まともに初音ミクの歌声に晒されてしまう事になる。 既にその部屋の入口で体感しているヨーコにとって、それがどれほどに大変な事であるのか身にしみて理解していた。 しかし、今ここで誰かが立ち上がらなくては、電脳空間を進もうとしている5人を救う事はできない。 「ならば、私も行こう。 何度も何度も戦場をくぐり抜けてきた私だ。 たかが歌声ぐらい耐えてみせる。 そもそも相手がホムンクルスだと言うなら、私の守備範囲だ」 そう主張した津村斗貴子に対して、慌てて反論したのは武藤カズキの妹、まひろであった。 かつては詳しく聞いていなかったものの、兄や斗貴子がどのような能力を持っていたのか、キャプテンブラボーから事情も含めて伝え聞いていたのである。 「だめだよ、斗貴子さんっ。 だって、斗貴子さんは核鉄を戦団に返しちゃったんでしょ? 核鉄が無いのにそんな危険な所に行ったら危ないよー」 ここにカズキが居たならば、きっと彼女を止めた筈だろう。 兄に代わって、斗貴子の行動を制するのは自分の役目だと思ったのか、まひろは斗貴子にしがみ付いて離れようとはしなかった。 そんな彼女の様子を嬉しく思ったのだろう。 斗貴子は柔らかい笑顔を覗かせつつ、そっとこう答えたのだった。 「大丈夫。確かに私の核鉄は錬金戦団に返した。 しかし、私のもうひとつの核鉄はすぐ傍にある」 「ふぇ?」 小首を傾げるまひろの頭を優しく撫でながら、抱きついている彼女の身体からそっと離れると、既に準備万端の様子のヨーコと視線を合わせた。 「斗貴子さんって言ったわよね? 一緒に行くなら早くして。 急がないと置いて行くわよ」 「無論だ。 そしてその言葉、そっくり返しておこう」 小気味よい会話を交わした後、ヨーコと斗貴子は例の異空間の部屋へと向かったのだった。 そして、戦いの場へと向かう2人を励ますように声を掛けて見送る夏奈の隣で、千秋は物悲しげに俯いている。 「私は無力だ。 私も藤岡たちを助けるために力になりたいのに、悔しいよ。 本当に、私は無力だ……」 そんな言葉を洩らした妹に、夏奈はいつもの快活な彼女らしくもなく、優しく彼女の肩を抱くとそっとこう答えたのだった。 「千秋、今の私達に出来ることは、みんなを励ますことだ。 そしてこの後、私達にも大事な役目が待っているんだぞ」 「大事な役目?」 いつもの軽蔑するような視線はそこにない。 縋るような目で姉の言葉を待つ千秋であった。 「そう、大事な役目だ。 みんなが無事に戻ってきた時に、元気に迎えてあげるのが私達の役目だぞ」 その胸がすく一言にどんなに救われたのか。 千秋は一瞬涙目を浮かべるが、それをごまかすようにすぐに視線を逸らして口を開いた。 「パカ野郎、姉っぽく振る舞うんじゃない」 「お、いつものチアキに戻ったな。 その憎まれ口があってこそ、私のチアキだからなー」 「パカ野郎、誰がお前のものだ、まったく。 ここにふじおかが居たなら、アラスカに居た頃のように鮭諸共に狩っているところだぞ」 そんな妹二人の会話の様子を見つめて、嬉しそうに笑顔を浮かべる春香であった。 一方――例の異空間の部屋に辿り着いたヨーコと斗貴子。 扉を開けて中へと足を踏み入れれば、電脳空間にいるアスカ達の傍へと近づく事が出来る事は既に確認済みであった。 しかし、前回の凛達の時と異なり、今回はみかんの禊ぎによる支援がない。 はたしてどれぐらいの間、意識を保っていられるのか全く分からなかった。 気休め代りに持ってきた耳栓を耳の穴につめて、その扉の前で頷き合うと、ヨーコと斗貴子は、一気に扉を開け放って、その中へと踏み込んでいった。 「うおおおおおおっ――!」 少女らしからぬ男勝りな声を上げつつ、ヨーコは突進していく。 そして例のイソギンチャクのホムンクルス群が目に映ると、超電導ライフルを構え、連射していった。 すると、正確無比なその射撃によって、ニア達を拘束していた触手は次々と破壊されていく。 「ヨーコさん!」 ニアは喜びを隠せない。 かつて、流麗のアディーネが駆るセイルーンにその身を捕えられてしまった時も、助けてくれたのはヨーコである。 その時の記憶が蘇ったのか、思わず目に涙を浮かべるニアであった。 一方――ヨーコと共にこの異空間へと踏み込んだ斗貴子は、そのあちこちで倒れて気を失っている少年達の中から、カズキの姿を見つけ出していた。 そしてすぐさま彼のもとへと駆け寄ると、迷うことなく意識を失っているカズキの身体を抱き起した。 「すまん、カズキ。 少しの間、おまえの核鉄を借りるぞ」 言い終えるが早いか――斗貴子は、彼の身体を強く抱き締めたまま、自身の唇をカズキの唇に押し当てた。 『武装錬金っ! バルキリースカートっ!』 カズキと唇を重ねたまま、斗貴子は心の中でそう叫んでいた。 その場が通常空間の常識が当てはまらない異空間だからこそ出来た手法と言えるのかもしれない。 ぴったりと隙間もなく全身をカズキと密着させ、更には粘膜である唇と唇を重ね、魔術で言うところのパスを繋いだ状態と同じ状況を作った斗貴子は、彼の心臓として移植された核鉄の能力のみを引き出したのであった。 すると――彼女の実体はカズキと抱き合ったままでありながら、そこから浮かび上がるように派生を果たし幻体の姿となった斗貴子は、処刑鎌とも言われる4本の可動肢の先端に1枚づつブレードがついているバルキリースカートを両脚に装備し、先行しているヨーコを一気に追い抜き、イソギンチャクのホムンクルス群を射程圏に入れたのだった。 「臓物(をブチ撒けろ!」 接近戦や、不特定多数の敵との戦闘ならば、抜群の能力を発揮するバルキリースカートである。 またその攻撃の精度も極めて高い。 一気にイソギンチャクのホムンクルス群の中へと飛び込んだ斗貴子は、バルキリースカートを高速で稼働させ、原形がとどまらない程にその触手や本体を切り刻んでいく。 そこへヨーコからのライフルの支援が加わり、アスカ達を拘束していた触手はあっという間に駆逐され、撃破されていったのであった。 「すまない斗貴子、恩に着る」 四肢が自由になったセイバーは斗貴子に礼を告げると、まさに一騎当千の力を示し、残っていたホムンクルス群をあっという間にその剣で殲滅していく。 それはまたニアのグレンラガン、アスカの弐号機もまた同様であった。 こうして、圧倒的な程に多勢であった筈のイソギンチャクのホムンクルス群を、ヨーコ、そして斗貴子の応援もあり、完膚無きほどに撃破したのである。 その様子をオモイカネの端末機を通してモニターしていた少女達は一様に安堵の笑みを浮かべた。 しかし、その一方でオペレーターのひとり、茜からは厳しい現実も伝えられた。 「戦いが終わって、ヨーコさんと、斗貴子さんの意識が途切れてしまいました。 耳栓はしていた筈ですが、やはり初音ミクによるその歌声を完全に遮断する事は出来なかった模様です。 それと――アスカさん達についてですが、電脳空間の深層部へと進んだために、例の部屋を使っても、もう手助けをする事は不可能になりました」 「――という事は」 「あの5人は完全に孤立無援の状態になってしまったという訳ですわね」 比較的、魔力そして体力面においても余力を残していた穂波とアディリシアは、必要に応じてまたすぐに支援できるように、ゆかりや茜たちの傍にいたのであるが、もはやその手段が取れない事実を知って落胆の色を隠せなかった。 そんな彼女達に声を掛けたのは、この宴席の場で知り合って、穂波とアディリシアにとって姉的な存在となった凛とルヴィアゼリッタであった。 「あの5人ならきっと大丈夫よ。 ええ、絶対に」 「そうですわね。 貴女と意見が同じになる事なんて一切あり得ないと思っておりましたけれど、その一点に限って言えば、全くの同感ですわ」 普段はいがみ合う事の多い凛とルヴィアゼリッタであるが、その実は互いに信頼し合い、認め合っている関係なのだろう――そう感じ取った穂波であった。 それはまたアディリシアもまた同様であったようだ。 凛とルヴィアゼリッタもそうであるように、穂波とアディリシアもまた互いに視線を重ねて笑みを浮かべ、そして静かに頷いたのであった。 一方、ドロンボー一味。 またしても策が上手くいかず、短気な性格のドロンジョはヒステリックな声を上げている。 そう――イソギンチャクのホムンクルス群が殲滅させられた後、次は人型戦闘兵器である“量産型うろたんだーロボ”を大量に投入したのであるが、華麗でありまた力強いセイバーの剣技、そしてロンギヌスの槍まで装備したアスカの弐号機、更にはギガドリルブレイクを駆使したニアのグレンラガンの活躍によって、その策もまたあっさりと失敗に終わってしまったのであった。 しかもアスカ達5人は、電脳空間において初音ミクが存在している場所へ接近中であり、その接触は時間の問題となっていた。 「まったくもう、このスカポンタンっ! またしても、あの小娘たちにしてやられるなんて、どういうつもりなんだい!?」 「申し訳ありませんです、ドロンジョ様〜。 こうなったら最後の手段をとりますよん。 “卑怯戦隊うろたんだー”の精鋭隊員たちを一気に投入しますわー。 ほら、ポチッとなっ」 すると――電脳空間にはまた新たな人の姿が現れた。 卑怯ブルーこと、卑怯戦隊うろたんだーのリーダーであるKAITO。 細身の姿に纏っている青いマフラーが印象的な青年である。 そして、卑怯レッドこと卑怯戦隊うろたんだーのお色気担当、MEIKO。 露出度の高いその赤いコスチュームは、今までにも多くの男たちを悩殺してきた事だろう。 更には卑怯イエローこと鏡音レンと、卑怯オレンジこと鏡音リン。 愛用しているロードローラーの運転席に座っている為に一見すると判り辛いが、レンとリンは小柄な少年少女である。 「ほーら、おまえ達っ! あらゆる手を尽くちて勝ちに行くのさ!」 「えーと、ドロンジョ様。 そのネタはあまりにもピンポイントにコアなネタなので、ついて来れずに誤字かと思ってしまう読者が大勢いそうな気がしますですよ」 「なに言ってんだい。 そもそも、こんな作品を読んでいる読者が大勢いるもんかい」 大きなお世話だと言いたい所であるが、悲しいかな否定はできない。 兎にも角にも最終決戦である。 量産型うろたんだーロボの一軍を撃破した勢いをそのままに進むアスカ達。 そしてその前に立ち塞がるのは、ボーカロイドのKAITOが率いる卑怯戦隊うろたんだー。 その激突の瞬間は近づいていた。 「また、新たな敵と思しき人影が接近してきました。 その数は4人――ちょっと少ないですね」 5人の中ではナビケーター担当のルリが接近する敵の戦力を分析し、すばやく報告していた。 「4人だと? 先ほどはあれ程に数多くの人型兵器を投入していたと言うのに、どういう事だ?」 首を傾げるナギであったが、先ほどの戦いからロンギヌスの槍まで装備できた弐号機のアスカは楽観視しているのか軽口気味の口調であった。 「大丈夫、大丈夫。 どんな敵がやってきたって、この槍があれば何も恐れる事はないわ。 アタシに任せておいて!」 その時であった。 急に速度を速めた敵と思しきその人影――卑怯戦隊うろたんだーのリーダーであるKAITOは、あっと言う間にアスカとの間合いを詰めると、彼女の目前に迫ったところで、懐から“何か”を取り出した。 「は、速い――でも、どんな攻撃だって負けな――」 どんな攻撃だって負けないわよ、と続けるつもりだったのだろう。 しかし、KAITOが懐から取り出してばら撒いた大量の紙片に目を奪われ、思わず絶句してしまうアスカであった。 「くらえ、碇シンジの悩殺写真攻撃っ!」 「な、なによ、コレっ?」 そのばら撒かれた紙片の正体は碇シンジのあられもない姿を激写した写真の数々であった。 着替え中なのか半裸状態の姿や、シャワーを浴びている姿、更にはまるで少女のような中性的な雰囲気を漂わせて、すやすやと眠っている写真など、普通に考えれば入手できる筈もない彼のレアな写真の数々であったのだ。 「ふっふっふ、惣流・アスカ・ラングレーよ、この写真が欲しいだろう? 大好きな彼氏の悩殺的な写真の数々なのだ。 我慢する必要はないぞ」 「だ、誰が欲しがるもんですかっ! そ、それにアタシとシンジはそういう関係じゃないんだからね!」 「ほう、そうなのか。 ならば、まだ見せていない、この秘蔵の碇シンジの全裸写真は、綾波レイとかいう少女にくれてやろう」 「ななななな、なんですって! し、シンジのおーるぬーど?! だ、だめよっ! シンジの全ては全部アタシのモノなんだからっ! ファーストなんかに渡してなるものですかっ!」 もはや完全に冷静さを失ってしまったアスカは、あたふたと手を振り回しながら、散らばっている写真を集めている。 「最初からそう言えばいいのだよ。 ほら、これがお肌つるつる、碇シンジの生まれたままの姿を撮った生写真だ」 「おおおっ!」 もはや餌を投げられ喜んで口を開けている池の鯉と同じ有様のアスカであった。 シンジの全裸写真だというソレを投げられ、慌てて拾おうとしたその隙を狙われてしまう。 どこぞのシティーハンターが何度も殴られてきたあの100tハンマーを取り出したKAITOは、アスカの後頭部を激しく殴打したのであった。 「あうう、なんて卑怯な」 意識が途切れてしまうその直前に手にした写真を握り締めながらそう漏らしたアスカであった。 ちなみにその写真には、確かに碇シンジの生まれたままの姿の写真が写っていた。 ただし、生まれたままと言うよりも、生まれた頃の写真と言えようか。 そう、つまりは赤ん坊の頃のシンジの全裸写真であったのだ。 更には、騎士王セイバーにも魔の手が迫る。 「「 I am the bone of my sword.( 」」 「な?! その詠唱はっ?」 そのセリフに激しく反応し、動揺を隠せないセイバー。 彼女の前に現れたのは卑怯イエローこと鏡音レンと、卑怯オレンジこと鏡音リン。 2人は乗り込んでいたロードローラーの運転席から身を乗り出しながら、某主人公の禁断の大魔術、“固有結界”を展開しようと言うのか、詠唱を続けようとしていた。 「えっとー、ごめんね。 コユウケッカイの呪文を詠唱しようと思ったんだけど、リンは滑舌が得意じゃないんだ」 「ナニ、言ってるのよ、それはレンの方でしょっ」 「まあ、それはさておき、これが僕らのコユウケッカイさ!」 幼い少年、レンのその宣言に思わず身構えるセイバー。 たとえ、彼女のマスターである衛宮士郎の魔術と異なるものであったとしても、固有結界と呼ぶ魔術ならば、油断できるものではないだろう――と、すぐさま反撃できるように剣を握り直して上段に構えたその時であった。 「えいっ! 衛宮士郎お手製の肉じゃがアタックっ!」 「こっちは衛宮士郎のカレイの煮付け責めだー」 それは攻撃と言えるものなのかどうか。 セイバーは、一瞬でその場が衛宮邸の台所と化してしまったかのような錯覚に陥っていた。 「こ、この実にほくほくとしたじゃがいもと豊潤な香りは確かにシロウの肉じゃがです! そしてこっちの甘辛い味付けが忘れられぬカレイの煮付けも見ればすぐに判ります。 ええ、見紛うことのない、シロウの手料理です。 ああ、まさかこんな所でシロウの手料理と出会えるとはっ」 嗚呼、悲しいかな、すっかりと士郎に餌付けされてしまった騎士王様。 鼻孔をくすぐるその芳しいニオイに目を輝かせてしまっている。 「それだけじゃないよー、今度は衛宮士郎の炊き込みご飯とお味噌汁っ!」 「和食だけじゃないんだから! 今、必殺のビーフステーキ、霜降り和牛っ! ソースは勿論、衛宮士郎のお手製よっ」 キノコ類をふんだんに使った炊き込みご飯もセイバーの大好物のひとつである。 更には、生粋の庶民派である衛宮家ではなかなかお目にかかれない和牛のステーキを前に、セイバーの興奮と食欲のバロメーターは高まる一方である。 どうやら、彼らが展開している固有結界は「無限の剣製」ならぬ、無限の食製と呼ぶべき代物であるようだ。 まさにセイバーにとっては、“全て遠き理想郷”と呼ぶべきものなのかもしれない。 そんな訳で、すっかりとお食事モードに突入してしまったセイバーの様子を目の当たりにして、思わずため息を漏らす、ルリとナギであった。 「なんて、卑怯なのでしょう。 セイバーさんの唯一の弱点を突いてくるなんて」 「いや、相手がうろたんだーだと判っていたのだから、このような卑怯な戦法を事前に想定しておくべきだった。 しかし、こうなると、我々にとって最後の砦はニアのグレンラガンだけだな」 そう――彼女達5人の中で、戦力として計算できるのは、セイバーとアスカとニアの3人のみ。 その内のセイバーとアスカが戦線を離脱した格好になってしまった今、残る希望はニアのグレンラガンのみという訳である。 しかし、そんな最後の砦の彼女に対しても卑怯戦隊うろたんだーの魔の手が迫る。 そう――露出度の高い赤いコスチュームが印象的な卑怯レッドことMEIKOが、ニアの目前に立ちはだかったのだ。 「さあて、貴女の相手はこの私よ。 ――と言ったものの、事前に聞いた話だと、貴女には弱点らしい弱点がないのよねー」 「ええ、その通りです! シモンの写真なら、ちょっぴり欲しいと思いますが、私はそのような事で惑わされたりはしません」 そう答えて、堂々と胸を張るニア。 この辺りは、“元”という一文字はつくものの、さすがは姫君であると言えようか。 「まあでも、たとえ弱点が無くたって、いくらでも方法はあるのよね。 ――で、とりあえず、1本どう?」 ニヤリとちょっぴり色っぽい笑みを浮かべたかと思うと、どこに隠し持っていたと言うのか、MEIKOは日本酒の一升瓶を取り出した。 そして間髪置かず、ニアとの間合いをつめると、一気に彼女の可憐な唇をこじ開けて、その一升瓶の口をねじ込んだのである。 「はぁふっ、んんっ、んくっ」 未成年に飲酒をさせてはイケマセン。ええ絶対に。 しかも、一気飲みをさせるなんて、本来ならば論外と言えよう。 こうして強引にお酒を飲まされ、ニアの顔は見る見る内に真っ赤に染まってしまう。 「おい、ニアっ! しっかりするんだ! おまえまで倒れてしまったら、我々の負けだぞ!」 必死に励まそうとするナギであったが、既に酔っ払ってしまったと思われるニアの耳には届いていないようである。 更には酔ってしまった為なのか、ついには身に付けていたグレンラガンの装甲も解かれ、ピンク色を基調とした普段着の姿に戻ってしまうニアであった。 こうなると、ごくごく普通の女の子である――酔っ払っていては普通とは言えないが。 そして、ふらふらと身体を揺らしながら、眠そうに半眼をどうにか開けている様子のまま、目前に居たMEIKOの豊満な胸の谷間に顔を埋めてしまう。 すると――。 「ほあ? あれ、このぽよぽよとした大きな胸は――ああ、ヨーコさんですね!」 「はい?」 突然、他の女性の名前を呼ばれ、困惑してしまうMEIKOをよそに、ニアの独演会が始まった。 「まったくもう、ヨーコさんったら、またこんな格好をして! 私、知っているのです! シモンったら、時々、ヨーコさんの胸をじっと見つめたりなんかしているのですよ! あうう〜どうせ、私の胸は小さいですよ、もうっ」 「えっと、その――ニア、さん?」 「ニアさん、ぢゃありませんっ! 妙齢の女性がこんな格好するのはいけないと思うのですっ! そんなにシモンの前で素肌を見せたいなら、こうしちゃいますよ、もうっ!」 ぐい――と。 ニアは、MEIKOの生地の部分の極めて少ない上着に手を掛けると、一気に引き破ってしまったのである。 小柄な少女に見えても、実はとってもニアは力持ち。 そんな彼女が酔っ払ってしまった今、それはもはやブレーキの壊れたダンプカーのようなものであると言えよう。 「きゃあぁぁぁぁっ!」 見事なまでにたわわに育ったMEIKOの胸は全開状態である。 悲鳴を上げつつ、両手で胸を隠し、背を向けた彼女に対して、ニアは更に手を伸ばした。 「はふぅ――あれ、こっちも脱がして欲しいのですか?」 「いやっ、だめっ、それだけは許してぇぇぇぇ!」 びりびりびり――と布切れが破れていく音が響き渡る。 そう、乙女の願いもむなしく、ニアの手によって全てを晒されてしまったMEIKOは、たまらずその場から逃げ出してしまう。 それはもう脱兎のごとく。一目散に逃げていくMEIKOであった。 「どうしてヨーコさんったら逃げてしまうのかしら。 あれ?――よく見たら、こんな所にギミーとダリーがいたりするのですね♪」 「「 はいいぃっ――?! 」」 酔っ払い姫、ニアの目にはレンとリンの姿が、幼い姉妹のギミーとダリーに見えてしまったようだ。 「ギミー、ダリーっ! こんなキケンな所に遊びにきてはダメですよ! ――と、口で言い聞かせても、あなた達はなかなか言う事を聞いてくれませんし。 ええ、やはり、ここは愛情たっぷりの躾が必要だと思うのです」 「あ、あの、ニアさん、違うってば」 「そ、そうよ、私達は、そのギミーとかダリーとかいう子供じゃなくって――」 「問答無用ですっ! そこに座りなさいっ!」 「「 は、はいいっ〜! 」」 ただならぬ雰囲気と酒臭い息を感じつつ、抵抗する術を失ったレンとリンはおとなしく、ニアの前に座ったのだったが――。 「罰として、お尻、ペンペンしちゃいますっ!」 「「 いいっ?! 」」 言い終えるが早いか、ニアは素早くリンを小脇に抱きかかえ、更には片手でレンの身体を抑え込むと、彼の可愛いお尻を叩き始めた。 繰り返しになるが、ニアはとっても力持ちである。 幼い二人が足掻いても逃げ出す事など出来はしない。 「いたいっ! いたいよ、ニアお姉ちゃんっ!」 「ギミー、あなたは男の子でしょっ! これぐらい我慢なさいっ!」 「いや、だから、僕はギミーぢゃなくって――!」 「ほら、今度はダリーの番よ! お尻を出しなさいっ!」 「ひぃぃぃぃぃっ!」 ――という訳で。 すっかり、二人の事をギミーとダリーであると勘違いしたニアによって、レンとリンはこっぴどく罰を受け、ようやく解放されると愛車であるロードローラーに飛び乗って逃げ帰って行ったのであった。 「帰り道には気をつけなさい」と二人を見送るニアの姿があったのは言うまでもあるまい。 そして、そんな彼女の目に続いて止まったのは、既にぶるぶると震えているKAITOであった。 「あれ?――こんな所にアニキさんが! ええ、私、お会いした事はありませんけれど、シモンが作った人形を何度も見た事があるので知っていたのです。 ええ、あなたはシモンのアニキさんですね!」 「え? いや、確かに僕は“兄さん”とは呼ばれる事が多いけど――」 「あれ? でもおかしいのです。 確か、アニキさんは既に亡くなっている筈なのです。 ――という事は、あなたは幽霊さんなのですね!」 「はいぃぃぃぃ?!」 どんな思考回路で、そんな結論に辿り着いたのやら。 いやいや、そもそも酔っ払いにまともな思考回路を求めてはいけない。 「そうなのですね! 私、判りました! アニキさんは、シモンの事が心配で、なかなか成仏できなかった――と。 そういう事なのですね?」 「いや、その、ニア、さん? それはちょっと、いや、かなり違うと思うんですけど」 「ご心配なくっ! シモンの事は全て私に任せて、アニキさんはちゃんと成仏して天国に行って下さいね」 すると――それはどういう意味なのか、ニアは右腕をドリルに変えると、きゅるきゅると音をたてて回転させ始めたのである。 「アニキさんも、シモンのドリルで成仏できるのなら、きっと嬉しい筈ですよね。 ええ、今は私がシモンに代わって、アニキさんを見送ってさしあげますっ!」 「ひぃあぁぁぁぁぁっ!」 もはや一秒たりとも、この場に居残っていたなら命にかかわると。 それはもう決して振り返ることなく、KAITOは一目散に逃げていく。 そんな彼を、ニアはずっと勘違いしたまま、見送ったのである。 「アニキさん、天国でお幸せになって下さいね」――と。 そんな阿鼻叫喚が木霊する光景を見守り続けたルリとナギは、深いため息を洩らしつつ、声を揃えてこう言ったのだった。 「「 ほんと、バカばっか 」」 兎にも角にも、ニアの大活躍(?)で、強敵、卑怯戦隊うろたんだーの面々を退け、目指す目標であった初音ミクは、ついに5人の少女達の前に現れたのであった。 抱き締めれば折れてしまいそうなその細い身体と、くるぶしまで届く長さの青緑色のツインテールの髪が実に印象的であるその少女。 初音ミクは5人を前にしても、ずっと歌い続けている。 まるで言葉を喋れないのだと言わんばかりに。 どこか物悲しげな表情を覗かせつつ、ミクは歌い続けている。 しかし、その歌は彼女が望んで歌っている曲ではない。 素晴らしい原曲を改悪的に変え、聴く者の意識を奪うように刻まれた音の符を、ただ繰り返し歌い続けているのだ。 そんな彼女にナギは優しく語りかけた。 「初音ミクよ、私達はおまえを倒しに来たのではない。 何らかの呪縛によって、妙な曲を歌わされ続けているおまえを助けに来たのだ。 もしも、助ける術を知っているなら、教えて欲しい。 その為に私達はここまで来たのだからな」 そんなナギの優しさに触れて、嬉しかったのだろう。 ミクの瞳からは一滴の涙が流れ落ちた。 しかし、すぐにミクは俯くと、首を左右に振った。 私を助けることなど出来ない――と。 言葉を口にする事はできなくとも、この思いだけは伝えたかったのか――ゆっくりとミクは顔を上げると、セイバーの方を向いた後、意を決した様子で静かに頷いたのだった。 そう――私をその剣で解放して欲しい――そう告げているのであろう。 「初音ミクよ、その潔い姿勢は立派だが――そんな事はできない」 セイバーは苦渋の表情を浮かべつつそう答えた。 それはまた、アスカも同様である。 「そんな顔しているアンタに剣や槍を向けるなんて出来る筈ないでしょ。 ねえ、何かきっと方法はある筈よ。 一緒に考えましょ!」 そんなアスカの優しい言葉に、ミクは堪らずまた涙を流すのであった。 そんな少女達のやりとりをモニター越しにじっと見守っている三人組の姿があった。 ドロンボー一味のドロンジョ、ボヤッキー、トンズラーの三人である。 「あううう、泣かせる話だねぇ――。 まったく、こんな可愛いコを泣かせるヤツは、どこのどいつだい」 「まったくでんねん、とんでもないヤツでんねん」 手にはハンカチを持ち、号泣しているドロンジョとトンズラーであった。 そんな2人の様子を目の当たりにしながら、ひとり深いため息を洩らしたのはボヤッキーである。 「あのー、ドロンジョ様。 もしかしてもしかしなくても、そのとんでもないヤツらは、アタシ達の事だったりすると思いますよー」 「あ、そうだったわね」 「そうでまんねん、悪いのはワイらの事やった」 確かに悪党ではあるのだが、根っからの悪人ではないドロンボー一味の三人である。 互いに顔を合わせて頷き合うと、誰からともなく、初音ミクを早く解放してあげよう――と、そう口にしようとしていたその時であった。 「そこまでだ、ドロンボー」 それは実に唐突ではあったが、ある意味お約束な展開であった。 そう――白いツナギを身につけた少年と、薄桃色のツナギを身に纏った少女が現れたのである。 「ヤッターマンがいる限り」 「この世に悪は栄えない!」 巨大な犬型ロボット、ヤッターワンを従えて、正義のヒーロー&ヒロイン、ここに登場!――という事なのであるが。 「ちょっとちょっと、ヤッターマンのお二人さーん。 今週は出番が無くても問題ないですよー」 「そうでんがな。 だってワイら、初音ミクちゃんを捕まえて悪い曲を歌わせていただけでんがな」 「こ、このスカポンタン〜っ!」 嗚呼、せっかく改心しようとしていたと言うのに――雉も鳴かずば撃たれまい、という所であろうか。 「ナニ言っているんだ! やっぱり悪巧みを働いていたんじゃないかっ!」 「――というワケで今週は時間がないから、いきなりメカの素よ、ヤッターワンっ!」 説明しよう! ――と、説明しなくても賢明な読者の皆さんなら充分にご存知だろう。 ヤッターマン2号ことアイちゃんの手から投じられたメカの素は、大口を開けて待ち構えていたヤッターワンの体内へと取り込まれ、ドロンボー一味のロボットを撃破するための秘密兵器の精製を促すことになるのである。 「今週の、ビックリ、ドッキリ、メカ〜!」 盛大なファンファーレと共に、犬型ロボットのヤッターワンは、大きく口を開いて前かがみの姿勢を取った。 すると、その口内からは無数の小型兵器が現れて、それぞれにこう叫びながら行進を始めたのである。 『アイス、アイス、アイス』 見ると、カップ型のアイスクリームを模した小型ロボットや、ソフトクリームの姿そっくりの小型ロボットが、規則正しく行進し、ドロンボー一味が乗っている“うろたんだーロボDX”の方へと向かっていく。 説明しよう! そう、さすがにはコレは説明を要するだろう。 “うろたんだーロボDX”は、前述の通り、青いマフラーを巻いていることからも判るように、卑怯戦隊うろたんだーのリーダーであるKAITOのデータをもとにして造られたものである。 そして、ここで大きなポイントがひとつ。 コアなファンならご存知の事だろうが、KAITOの大好物はアイスクリームなのである。 三度の食事よりもアイスが好きで、たとえお腹を壊すことになるとしても、アイスを食べ続けようとするナイスガイ(?)なKAITOであったのだ。 そんな彼の基本データを忠実に再現して造られた“うろたんだーロボDX”の目の前に、アイスクリームの大軍が現れたなら――“彼”がどんな反応をしてしまうのか、ご存知の方はご存知なままに。 ご存知でない方もそれなりに想像できる事だろう。 『あいすくりーむぅぅぅっ! あいす、あいす、あいす、く・りー・むっ!』 突然、アイスという単語を連呼し始めたうろたんだーロボDX。 そして、目の前の大量のアイスクリームの小型ロボ達を食べようとし始めてしまう。 「あわわわわっ、どうしたって言うのかい、このロボットはっ!?」 「それがその、ドロンジョ様、どうやら制御ができなくなってしまったみたいなのよねー」 「この、このスカポンタンっ! こんな機械はね、古今東西、叩けば直るって決まってるのさ!」 そう言い終えるが早いか。 ドロンジョは、手にしたハンマーでボヤッキーが操作していた計器類やボタン、レバーの類を派手に殴打してしまったのである。 「なぁぁぁぁぁっ! ど、ドロンジョ様、なんてコトをっ!? どうやら今の一撃で、電脳世界との接続回路にセキュリティホールが開いてしまったみたいなのよー!」 そんなやり取りが現実世界で行われているとは知らないアスカ達。 しかしその反応は、彼女達が居る周囲でも実に判り易く現われてきたのであった。 「ああっ、あれは? あの渦巻き状に開いた穴は、きっとセキュリティホールです!」 いかにも怪しいといった形で空間に歪が出来て、渦を巻きつつ開いている穴を指差し、そう叫んだのはルリであった。 「おい、いくらなんでも、あれじゃあまりにもベタだろう。 セキュリティホールと言ったって、実際には絵的に穴が空いているワケじゃないのだぞ」 苦笑いを浮かべるナギであったが、電脳空間においては経験者である以上、誰よりも詳しいルリである。 その主張には妙に説得力があった。 「ええ、ベタなのです。 だって、ここは電脳空間なのですから。 イメージしたままの光景が現れたとしても決して不思議ではない事なのです。 そんな事よりも、ようやく敵の弱点が見つかったのです。 セイバーさん、あのセキュリティホールを貴女の聖剣で破壊して下さい。 そうすればきっと、初音ミクさんは呪縛から解かれる筈ですから」 「承知した! ここは私に任せて貰おう」 なにしろ、先ほどは投影されたものとはいえ、士郎の手料理を満喫したばかりのセイバーである。 魔力の行使は充分に行える状態であろう。 そして、静かにそのセキュリティホールへ向き直り剣を構えるセイバー。 すると、彼女が手にしている聖剣は、眩いほどの光を放ち始めた。 星が鍛えしその宝具は、ついにその真の力を見せようとしている。 「約束された(――」 今、その聖剣の名をセイバーは想いを込めて叫ぶ。 この一太刀で彼女を――初音ミクを救うのだ、と。 そして眠ったままになっている士郎をはじめ、多くの少年達を救ってみせると。 「――勝利の剣っ(!」 振り下ろされた聖剣からは、闇を斬る閃光が真一文字に突き進み、その光の一撃に両断されたセキュリティホールは跡形もなく消滅していったのであった。 「うわわわわっ、大変ですよ、ドロンジョ様〜! 電脳空間から凄まじい閃光が――って、やっぱり、こんなオチなのよねー」 ボヤッキーがまたしても、今週もなのかと観念したその次の瞬間、うろたんだーロボDXのコクピットは派手に大爆発をしてしまったのである。 その衝撃を受けて、途端にドロンジョ達は吹き飛ばされてしまう。 その様子を満足そうな笑顔で見届けて、勝利の決めポーズをしているヤッターマン達。 一方――どこか妙な所に吹き飛ばされたドロンボー一味。 気がつくと、そこはどこか寒々とした感が漂うとある道場であった。 「いったい、ここはどこなんだい?」 そう問いかけてみたドロンジョであったが、ボヤッキーやトンズラーもまた、この道場の正体は判る筈もなかった。 とにかく、爆風によって着衣は例によってボロボロの状態の三人組であったが、どうにか大ケガなどする事もなく、無事に今回の一件を終える事が出来そうな――そんな気がしていたその時であった。 「この、うつけものー!」 そう叫んで現れたのは、ひとりの女性であった。 実に鋭い太刀筋を覗かせて、びゅんと唸る彼女の竹刀。 すると、あっと言う間にドロンジョ達三人の頭には大きなコブが出来ていた。 「な、ナニをするんだい、この女っ!」 激怒して顔を真っ赤に染めるドロンジョであったが、竹刀を構えているその女性は全く怯む様子など見せず、堂々と仁王立ちしたまま口を開いた。 「問答、無用、であるっ!」 その一言は妙な迫力があり、勝ち気なドロンジョまでも肩をすくめてしまう。 「ここはバッドエンド後のお助けコーナー、“タイガー道場”である! ちょっとオマヌケな選択肢を選んだばっかりにバッドエンドを迎えてしまった諸君に対して、更に追い打ちをかけるコーナーなのだ!」 いや、本当の“タイガー道場”は、悩めるプレイヤーを助けるコーナーの筈なのである。 ――もっとも、今更、そんな些細な事を気にしていても始まらないだろう。 その証拠に肝心のドロンボー一味の彼らはと言えば、的外れな点に絡み始めた。 「ええっ、ここがあの有名なタイガー道場? それならば、あのコが居る筈なのよねー。 ロリブルマこと、イリヤたんが――」 「ワタシのコト、呼んだ――?」 その返ってきた声に反応して、振り返った三人組。 すると、そこに立っていたのは――。 「おーっす。 出番がなくて淋しがっている弟子2号の武藤環である。 リクエストに答えて、ブルマをチョイスしてみたゾ♪」 いつの間にこんな所に迷い込んできたと言うのか。 それとも最初からココで三人組を待ち構えていたのか。 体操服&ブルマという格好で登場した環であるが、女子大生の彼女にとって、その姿はちょっと旬を過ぎてしまっていると言えようか。 「いやあの、お嬢さん――。 ブルマというモノは、幼い少女が着てこそ映えるものであって――」 「問答、無用、であるっ!」 まさに一刀両断。 否定的な意見を口にしようとしていたボヤッキーに踵おとしを浴びせて沈黙させてしまう環であった。 このタイガー道場の主、冬木の虎こと藤村大河が剣道の達人ならば、武藤環は拳で岩をも砕き、下駄でフルマラソンを走り切るという程の空手の達人なのである。 下駄と空手は関係ないような気もするが、それはともかく。 よく似た性格の2人である事は言うまでもあるまい。 そんな風に息の合う様子を見せながら、満面の笑顔をそのままに口を開いたのは大河であった。 「さーて、こうして縁あって、タイガー道場にやってきた諸君にごちそうを準備しておいた! しかも、驚くことなかれ! その手料理を作ってくれたのは、諸君らも知っている美少女、ニア・テッペリン嬢である!」 「おお、あのカワイコちゃんの手料理が食べられるなら、大満足でんねんっ!」 「確かにあんな可愛いコであるからして、料理もきっと上手な筈ですよねー」 「まあ、確かにちょうどお腹がすいてきた所だし、いただこうかしらね」 安易にそう答えた三人であったのだが――。 「いやあ、あの会場からここまで運ぶのは苦労したのよー」 そう言って、環はふすまを開けて、数々のニアの手料理が並んでいるテーブルの方へと、三人を招き入れたのであった。 「なっ!? なによ、これ?」 「こ、コレは、ええと、一応は食べ物なのかしら〜」 「凄いニオイがするでまんねん」 ドロンジョ達が驚くのも無理はあるまい。 かつて、大グレン団を震撼させたニアの手料理の凄まじさは一言で語れるようなシロモノではない。 はたしてどんな調理方法であったのか、首を傾げたくなるような、紫色に変色を遂げた料理や、赤黒く染まった固形物などが並んでいる。 「ま、まさか、その――コレを私たちに食べろ、と?」 おそるおそる尋ねたドロンジョに対して、大河と環は息もぴったりにこう答えたのであった。 「「 オシオキダベー! 」」 直後――タイガー道場内には、なんとも凄まじい悲鳴が響き渡ったのであった。 その壮絶な様子たるや想像に難くない。 ここはやはり、合掌――であろう。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 『わたし、おはなし、するの、にがて……だから』 たどたどしい言葉遣いで、どうにかそう伝える事ができたミク。 幾千の言葉で形容するよりも、満面に浮べたその笑顔が彼女の今の胸の内を雄弁に物語っていると言えよう。 『だから、うたう、の。 あなたたち、の、ために』 そこまで言葉を繋いで、ふと何かに気がついたのか、ミクは慌てて首を左右に振ったかと思うと、言い直すように更に言葉を繋いだ。 『ちがう、うたいたい、の。 かんしゃ、の、きもち、こめて』 ミクの懸命なその姿に胸を打たれた少女達――アスカ、セイバー、ニア、ルリ、そしてナギの5人は、目頭を熱くしながら静かに見守っている。 そんな中、ミクは澄んだその声で歌い始めた。 言葉はうまく喋れない。 けれど、歌は歌えると――。 歌でその想いが伝わるのなら。 そして――たとえたったひとりでも彼女の歌を楽しみにしているという人がいるのなら、喜んで初音ミクは歌い続けるだろう。 ハジメテの音を忘れないように。 皆のハジメテのオトを思い出させるように。 そう――電子の歌姫、初音ミクはいつも皆の傍にいて歌ってくれる。 |
初めての音は なんでしたか? あなたの 初めての音は… ワタシにとっては これがそう だから 今 うれしくて 初めての言葉は なんでしたか? あなたの 初めての言葉 ワタシは言葉って 言えない だから こうしてうたっています やがて日が過ぎ 年が過ぎ 世界が 色あせても あなたがくれる 灯りさえあれば いつでも ワタシはうたうから 空の色も 風のにおいも 海の深さも あなたの声も ワタシは知らない だけど歌を 歌をうたう ただ声をあげて なにかあなたに 届くのなら 何度でも 何度だって かわらないわ あのときのまま ハジメテノオトのまま… 初めての音は ありましたか? あなたの 初めての音は… 知らない曲とか 街の音に ワクワクしてますか? 初めての言葉は ありましたか? あなたの 初めての言葉 言えずにしまったり 言わなかった 言葉は 少しさみしそう やがて日が過ぎ 年が過ぎ 古い荷物も ふえて あなたが かわっても 失くしたくないものは ワタシに あずけてね 時の流れも 傷の痛みも 愛の深さも あなたの声も ワタシは知らない だけど歌は 歌はうたえるわ だからきいて もしもあなたが 望むのなら 何度でも 何度だって かわらないわ あのときのまま ハジメテノオトのまま… 空の色も 風のにおいも 海の深さも ワタシのうたも かわらないわ あのときのまま ハジメテノオトのまま… 初めての音に なれましたか? あなたの 初めての音に 世界のどこでも ワタシはうたう それぞれの ハジメテノオトを… |
| 曲:「ハジメテノオト」/うp主:mok様 |
はたして――彼女の歌声がきっかけとなったのか。 現実世界では、変化が起き始めていた。 「あれ? ここは? 僕、眠っていたのかな……」 目を覚ました少年――碇シンジは、とある部屋の床の上で眠っていたというのに、実に心地良い寝心地だったような感慨に浸っていた。 忘れていた母のぬくもり。 まだ母親の胎内に居た頃に耳にした母の心臓の音。 それが彼にとっては初めての音であったのかもしれない。 記憶の奥底に眠っていたそんな母との絆を無意識の内に思い出し、どうしてそんな事を思い描いたのだろうか――と、シンジは首を傾げた。 「誰かが、僕に母さんの夢を見せてくれたのかな……」 そんな思いを巡らせつつ、辺りを見渡すと、そこはある種、異常な状態であった事に気がついた。 「あれ? どうして士郎さんや、他のみんなとここで一緒に眠っていたんだろ」 シンジの周囲には、今日、宴席に集まった少年達――士郎をはじめ、真九郎、シモン、藤岡、ハヤテ、アキト、カズキ、いつき、才人という面々がすやすやと心地良さそうに眠っている。 どうしてこんな状況になったのか記憶を辿ろうとするシンジであったが、その辺りの事を脳裏に浮かべようとすると、ぼんやりと霧がかかってしまうかのように思い出せない。 それでも、とりあえずは皆を起こさなくては――と、声を掛けようとしたその時であった。 「おお、やはり真九郎め、まだ眠っていたのか。 それは好都合だ」 扉を開け放ち、元気よく部屋の中へと駆け込んできたのは、ボリュームのある長い黒髪が印象的な幼い美少女、九鳳院紫であった。 他の誰よりも早く辿り着く事ができたのは、男の子のような半ズボンを愛用しているからなのかもしれない。 目当ての少年、紅真九郎の姿を見つけると、紫は迷うことなく彼のもとへと駆け寄って、仰向けに眠っている彼に覆い被さるように抱きついた。 「んっ――え、あれ? 紫?」 抱きつかれた衝撃で目を覚ましたのだろう。 真九郎がゆっくりと身を起こそうとしたその瞬間。 紫は電光石火の早業を繰り出した。 「真九郎、二度目のキスは大人のキスだぞ」 言い終えるが早いか――その彼女のセリフに真九郎が驚く猶予さえ与えず、紫は真九郎の唇を奪っていた。 その小さな唇を彼の唇に重ねて――更には、その彼の口内へと自らの舌を入れて、粘膜同士が熱く重なるほどに彼の舌と絡めていく。 「んんんっ!? んくっ、んっ、ん――!」 くぐもった真九郎の声が洩れる中、少年と幼い少女の濃密なその光景をシンジは呆然と見つめていた。 あまりに唐突すぎる展開に起き抜けの頭がついていけないのだろう。 そして、たっぷり、ねっとり――と。 真九郎の唇と舌を堪能した紫は、ようやく顔を上げると、満足そうな笑顔を振り撒きながらこう言ったのだった。 「うむっ、環の言う通り、べろちゅーは寝起きを襲うに限るな!」 「なっ! あのヒトはまた紫に良からぬことをっ――!」 声を荒げる真九郎。 彼のその声が目覚まし時計代わりになったのか、眠っていた少年達は次々と目を覚ましていく。 「あれ? なんで、こんなところで――」 「どうして、皆さんと一緒にここで眠っていたのでしょう?」 そんな時であった。 ひとり先行した紫の後に続けとばかりに、そんな少年達の寝起きを狙う少女達が次々と駆け込んできたのである。 「シロウっ――!」 「お兄ちゃん社長っ――!」 「ふ、藤岡っ――!」 今では遠い昔の出来事のようにさえ思える武藤環の講義の時間。 そこで彼女から教えられた秘策――彼氏の寝起きを襲って、“べろちゅー”を実践して見せたのは、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、葛城みかん、そして南千秋の3人であった。 イリヤスフィールは衛宮士郎の、みかんは伊庭いつきの、そして千秋は藤岡の唇を強引に奪い、更には環の教えに従い、熱く熱く、その幼い舌を彼の舌へと絡めて離さなかったのである。 元よりイリヤスフィールは士郎が絡むと直情的に邁進する一面を持っていたし、みかんは持ち前の無邪気な部分が手伝って、その行動を後押しした格好である。 しかし、この3人の中では、最も理性的な性格を有している千秋までもが、どうしてこのような思い切った行動を示すことが出来たのか。 それはやはり彼の雰囲気に父親の面影を感じたからなのかもしれない。 兎にも角にも、3人の少年達は一様に慌てふためいている。 強引に払い退かせようとすれば出来た筈であるが、士郎も、いつきも、そして藤岡も心優しい性格の持ち主であり、そんな事ができる筈も無かった――のであるが。 「あーら、衛宮くん、随分とお楽しみ中のようね」 「そうですわね、頬が緩みっぱなしで、みっともありませんわね」 「先輩――まさか、小さい女の子が好きだったなんて。 はっ!? それとも、つるぺたな胸が好みなのですか!?」 射抜くような鋭い視線はそれだけではない。 たった今、電脳世界から帰還したばかりの騎士王様は、再び戦闘モードとばかりに鎧を身に纏い、聖剣を手にしている。 「シロウ――どうやら、私は今一度、この聖剣を振るわなくてはならないようだ」 「えっ、わっ、ちょっと――遠坂、ルヴィアさん、桜っ、そしてセイバーっ。 違うんだ、これは誤解なんだ!」 まさに修羅場。 目を三角にした美少女達は獲物を狩ろうとする態勢に入っているかのように殺気立って見せている。 そしてそれは士郎の周囲だけではない。 「イツキ――あなた、みかんに手を出すなんて、どういうつもりですの!」 「そうやで、いっちゃん。 ちゃんと理由を教えて貰えるんやろね?」 「うわわわっ、アディリシアさん、穂波っ、コレは本当に違うんだっ!」 「違う事あらへん。 いっちゃん、あんた、さっきまでみかんとキスしとったよね」 嗚呼、こちらもやはり修羅場のようである。 そしてもうひとつの修羅場の方は、少しばかり方向性が違っていた。 「藤岡くん、あなた、てっきりカナの事を気に入っているとばかり思っていたわ。 本当は、チアキのことが好きだったのね」 「おお、チアキよっ、姉として祝福するぞ! おい、藤岡っ! チアキを幸せにしてやるんだぞ〜!」 「ちっ、違うんだよ、南っ! こ、これは誤解なんだ!」 「まっ!? 藤岡くんたら、既にチアキと五回もキスしているの?」 「もうこうなったら、すぐに結婚だっ。 なあ、藤岡、式場は早めに予約しなくっちゃな。 チアキの結婚式なんだから、冬馬や内田、吉野も呼ばなくっちゃなぁ」 「み、南ぃっ。 だから、違うんだって」 好きな女の子から、他の女の子との結婚を勧められる展開になろうとは。 藤岡はがっくりと肩を落とした。 彼の報われない日々はまだまだ続くことだろう。 一方――こちらも電脳世界に行っていた為に遅れてやってきたナギとルリ。 意中の相手である綾崎ハヤテとテンカワ・アキトの姿を見つけたのであるが――。 「お嬢様! 申し訳ありません。 なんだか僕、眠っていたみたいで」 「どうしたんだ、ルリちゃん。 そんなに慌てて走って来るなんて。 何かあったのかい?」 2人は――そう、ハヤテとアキトは、既に完全に目を覚まし立ち上がっている状態であり、今更、寝起きを襲える様子ではなかったのである。 「ちっ、遅かったのか」 「――ですね」 どうやらナギとルリがそれぞれの意中の相手に対して“べろちゅー”を遂行する機会はまた当分先のことになってしまったようである。 2人揃って肩を落とし落胆しているそのすぐ横で、強引に実力行使に出ようとしているツンデレ美少女の姿があった。 「この、犬ぅぅぅっ! そこでおとなしく二度寝しなさいっ!」 「ちょ、まてっ、ルイズっ! こんな所で魔法なんか使ったらダメだろっ! そう言えば、彼女――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールも、環の講義を密かに聞いていましたね。 ――ええ、確認完了。 とりあえず、魔法で吹き飛ばすようにして眠らせた隙に“べろちゅー”を敢行できたとしても、肝心の才人が意識を失ったままでは意味が無いことに、ルイズはまだ気づいていないようである。 そして更にその脇の方で。 ずっと唇を重ね合っている男女の姿があった。 「えへへ、凄いなぁ、お兄ちゃんと斗貴子サン。 こんな騒々しいのに、ずっと眠ったまま、キスを続けているなんて♪ あ、そうだっ。 こんなチャンスはめったにないし、ケータイで撮っちゃおっと」 戦いの場へと向かうためにカズキの身体を抱き締め、そしてキスをした斗貴子。 まさか意識を失っている間に、彼の妹の携帯電話の待ち受け画面用として、その光景を撮影されてしまうとは、夢にも思っていなかった事だろう。 この2人もまた眠りから覚めた後は、大変な騒動になってしまう筈である。 そんな中、安泰なカップルの存在もあった。 「シモン、ただいま帰りました」 「お帰り――って、ニア、どこかに行っていたの?」 するとニアは、頬を赤く染めた状態で、大胆にも彼に抱きついてしまう。 どうやら電脳世界で酔っ払ってしまった彼女は、現実世界に戻ってきても、その状態が続いているようである。 唐突にニアに抱きつかれたシモンは、その勢いに押されて、思わずその場に腰を落としてしまう。 「に、ニア?! どうしたの? ほら、そんなに抱きついたりしたら――み、みんなが見ているよ」 誰も見ていないのなら抱きつかれても構わないのか――と。 シモンとニアのすぐ傍にいたヨーコであったが、とある事情から、ソレどころではなくなっていた。 「ニア? あれ、眠っちゃったの?」 完全に酔いが回ってしまったのだろう。 ニアはシモンの胸の中ですやすやと寝息をたてている。 そんな彼女を起こしては可哀想だと、シモンは床に腰を落としたまま、半身を起こすために床をついているその手に力を込めたのであるが。 ぐにゃり――と。 実になんとも柔らかな感触。 固い床にしては、随分と違和感があり、そして艶めかしくもあった。 「ねえ、シモン。 そろそろ、その手――どかして欲しいんだけど」 「ええっ、わっ、そのっ、ヨーコ!? なんでそんな所でっ?!」 何故と問われても、ヨーコとしては困る所だろう。 イソギンチャクのホムンクルス群と戦うために奮闘した後、その際にミクの歌声によって意識を失ったヨーコは、シモンのすぐ傍で眠っていたのであった。 無意識の内の行動であるのかどうかは別として、必死にシモンのすぐ傍まで歩み寄り、彼に寄り添うように意識を失ったヨーコの姿がそこにあったのだ。 もっとも――シモンもヨーコも寝相が悪いために、すぐに離れてしまったようではあるのだが。 どうやら、ヨーコには密かな恋心が芽生えているのかもしれないのだが――それはまた別のお話である。 いずれにせよ、今はこの現状の把握が第一だろう。 そう――先程からシモンの手がニギニギと鷲掴みしているその場所は、ヨーコの少女らしからぬ立派な双丘のその片方であったのだ。 「あわわわわっ! ご、ごめんっ!」 慌てて飛び退いたシモンであったが、今度はその反動でニアの頬にキスをしてしまう。 もっとも、頬にシモンの口づけを受けたニアの方はと言えば、気持ち良さそうに眠っている状態であり、気づいている様子はまったくない。 けれど、純朴なシモンはすぐに顔を真っ赤に染め上げ、眠っているニアに何度も何度も謝ってみせた。 そんな彼の様子がちょっと面白くなかったのか、ヨーコは頬を膨らませながら、口を開いた。 「ふーんだ、私、あとでニアにバラしちゃおうかな。 眠っている隙に、シモンってばニアの唇を奪ったんだぞ――って」 「ヨーコっ! そんなウソを言わないでよっ! キスしたのは頬の方で唇じゃないって!」 「あら、寝込みを襲ったのは同じでしょ。 私だって、シモンにオッパイを揉まれたし。 あ、そうだ。 そのコトも付け加えて、ニアに喋っちゃおうかな〜」 「よよよよよ、ヨーコぉぉっ。 そ、それだけは勘弁して、お願いっ」 「さーて、どうしようかな♪」 どうやら、こちらの少年少女達にもひと騒動が待っているようである。 そんな中、真っ先に目覚めたものの、周囲に圧倒されて、ぽつねんと立ちつくしていたのはシンジである。 あちらこちらで濃密なキスが始まったり、修羅場が展開されたり。 とりあえず、対岸の火事で良かったと安堵していたのであったのだが――。 「ほい、どうやら、好きなオトコノコにキスをしていい流れみたいネ」 そう言ってシンジの傍へと駆け寄ってきたのは、森田マツリであった。 エキゾチックな雰囲気漂うその少女は実に積極的な性格のようだ。 「将来、シンジはワタシの婿になって、タリホ族の酋長になるオトコね。 だから、ちょっとばかり早く、ワタシとキスしても問題ないネ」 有言実行型のマツリの行動は実に早い。 「ええっ、わっ、ま、マツリさん?」 小柄で細身でありながら、出るべき所はしっかりと成長しているマツリである。 その女性的な魅力を目の当たりにして、押し倒されたシンジは抵抗もできず、そのまま唇を奪われてしまうのか――と。 そう思われたその瞬間であった。 「なに、ヒトのオトコに手を出してんのよっ!」 さて、真打ち登場。 ようやく電脳世界から帰ってきた彼女の目に留ったのが、意中の彼にキスをしようとしているマツリの図である。 そんな光景を前にして、惣流・アスカ・ラングレーがおとなしくしていられる筈が無かった。 某サイボーグ戦士も真っ青になるような加速を見せて、一気に間を詰めると、シンジを押し倒す格好になっていたマツリにとび蹴りを食らわせたのである。 「ほい、いきなり蹴るなんてランボーモノね! そんなオテンバ娘にはお灸が必要ネ」 「ふんっ! 洋モノのクセになんでお灸なんて知ってるのよっ」 そう言う貴女も4分の3は洋モノですよ――とツッコミを入れたい所であるが、そのあちこちで修羅場と化しているこの状況で、ツッコミ役は皆無であった。 とにかく、シャーマンの血を受け継いだ動物的勘を有し、野生的な生活を過ごしていたマツリはとても強い。 一方のアスカも選ばれし適格者として幼い頃から戦闘訓練を受けてきた経験がある。 両者は自身の力と技を駆使してぶつかり合い、そしてハードな激闘を続けていく。 そんな中、シンジに歩み寄っていく少女が2人。 森田ゆかりと三浦茜である。 「えーと、漁夫の利――かな?」 「そぉいうコト」 えい――とばかりに2人がかりでシンジを再び押し倒し、彼を挟むようにしつつ、そのままシンジの右の頬と左の頬のそれぞれにキスをするゆかりと茜であった。 「えええっ?! ゆかりさん、茜さんっ?」 「えへへ、キス、しちゃいました」 「ホントは唇にしても良かったんだけどねー」 頬を染めて俯きつつも喜びを隠せない茜と、ニンマリと満足そうにVサインを見せているゆかりであった。 「こ、こらーっ! ソレは、アタシのっ! シンジは頭のてっ辺から足のつま先まで、全部、アタシのモノなんだからー!」 「ほい、ゆかりもアカネもズルイね! ワタシもシンジとキスするネ」 「誰がさせるかっ!」 ――そんなワケで。 どうやら少年少女達の喧騒はまだまだ終わりそうにないようである。 そんな彼らの楽しげな光景を、きっとどこかで、KAITOやMEIKO、鏡音リンと鏡音レン、そして初音ミクも――目を細めながら見守っている事だろう。 今日という日が終わり、また明日になれば、それぞれの世界へと帰って行く少年少女達。 けれどまた縁があれば、こうして皆が集う事もあるだろう。 そんな再会の約束をして、少年少女達はまた再び、それぞれの世界で歩き始めるのであった。 叶うものならば――彼らに幸多からん事を切に願うばかりである。
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「なんじゃこれは?!」――とご不快に感じておられる皆々様。 誠に申し訳ありません。 深くお詫び致します。 それぞれのキャラに思い入れをお持ちの方にとっては、ご気分を害する結果になってしまった事でしょう。 本作品は当方の妄想のカタマリでありまして、普段、掲示板にて話題にしている作品のキャラ達を総動員してみたらどうなるのか? そんな安易な発想のもと、創作した次第です。 前編同様、キャラを多くした為に、それぞれの描写も薄っぺらいものであった事でしょう。 これも否定できません。 それでも書いた本人は随分と楽しみながら創作する事ができました。 妄想のカタマリを文章にしたのですから、楽しいのは当然なのかもしれませんが。 さて、それはさておき、本作品は当掲示板の書き込み3000番到達記念企画であります。 ウチのような僻地に足を運んで下さり、書き込み下さっておられる方、そして覗いて下さっておられる皆々様に心から感謝です。 本当にありがとうございます。 これからも相変わらずの遅筆ペースでありますが、のんびり楽しみながら創作活動を続けたいと思います。 宜しかったら、これからもお付き合い頂きたくお願い申し上げます。 ◆追記. 作中にて使用させて頂きました名曲「ハジメテノオト」はこちらで視聴できます。 ご存知でない方は、ぜひ一度、お聴きになって下さいませ。 ◆後編・登場キャラ一覧(計46人/13作品) ・新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ 惣流・アスカ・ラングレー ・Fate/stay night 衛宮士郎 セイバー 遠坂凛 間桐桜 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 藤村大河 ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト バーサーカー ・天元突破グレンラガン シモン ニア ヨーコ ・ロケットガール 森田ゆかり 森田マツリ 三浦茜 ・紅 紅真九郎 九鳳院紫 武藤環 ・みなみけ 南春香 南夏奈 南千秋 藤岡 ・ハヤテのごとく! 綾崎ハヤテ 三千院ナギ ・機動戦艦ナデシコ テンカワ・アキト ホシノ・ルリ ・武装錬金 武藤カズキ 津村斗貴子 武藤まひろ ・ゼロの使い魔 平賀才人 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール ・レンタルマギカ 伊庭いつき アディリシア・レン・メイザース 穂波・高瀬・アンブラー 葛城みかん ・ヤッターマン ドロンジョ ボヤッキー トンズラー ガンちゃん(ヤッターマン1号) アイちゃん(ヤッターマン2号) ・各VOCALOID作品 初音ミク KAITO MEIKO 鏡音リン 鏡音レン |
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